今回の選挙を「未来選択選挙」と位置づけているが…
10月14日、衆議院が解散した。衆院選の日程は「19日公示、31日投開票」となる。与野党は新型コロナ対策や経済政策などを争点に事実上の選挙戦に入った。
与党の自民、公明両党は新政権発足への国民の期待感をバネに衆院での勢力を伸ばしたい考えだ。岸田文雄首相は14日夜、今回の選挙を「未来選択選挙」と位置づけ、「コロナ後の新しい未来を切りひらいていけるのはだれなのか選択してもらいたい」と訴えた。
新政権の岸田内閣に国民はどれだけ期待しているのか。
報道各社の世論調査を見ると、60%を超えるものはなかった。これは内閣発足時の数字としてはかなり低い。たとえばNHKの世論調査では、内閣支持率は49%にとどまっている。一方、菅義偉内閣の発足時は62%だった。内閣支持率は最初は高く、後は下がる傾向がある。岸田内閣は厳しい船出となっている。
格差是正の目玉公約「課税強化」はいとも簡単に取り下げ
振り返ると、岸田首相は8月26日の総裁選出馬時にこう語っていた。
「国民の声に耳を澄まし、政治生命をかけ、新しい政治の選択を示していく」
「自民党の役員に若手を大胆に登用し、自民党を若返らせる」
独断専行に走る菅政権と古い体質から抜け出そうとしない自民党幹部への挑戦状だった。党内の改革を求める若手・中堅の議員の声に押され、自民党内で干されることも覚悟して立ち上がったようにみえた。しかし、いまの岸田首相にあのときの熱さは感じられない。
10月1日の党の役員人事では、政権運営の要となる幹事長に党税制調査会長を務めていた甘利明氏を起用した。甘利氏は元首相の安倍晋三氏や前財務相の麻生太郎氏に近い。安倍、麻生、甘利各氏の頭文字を取った「3A」は、自民党の旧態依然とした体質の象徴だ。これだけでも党の改革をやるつもりがないことがわかる。しかも甘利氏には現金授受の疑惑があり、その説明責任も十分果たしていない。
10月11日の国会の代表質問では、岸田首相は、自民党総裁選で掲げた「株式配当などの金融所得への課税強化」を先送りする発言を繰り返した。格差是正の目玉公約だったはずだが、いとも簡単に取り下げてしまったのだ。