フランスでは2019年より「歩道走行禁止」に規制強化
「電動キックスケーター」の交通違反や事故が増えている。電動キックスケーターとは、前後に車輪の付いた板に立ち、バッテリーによるモーターで動く、ハンドルのある立ち乗り2輪車のことだ。
自転車よりも軽く、簡単に折り畳んで電車に持ち込めるなど利便性が高い。量販店では3万円程度で買うことができ、街中で手軽に乗れることから若者に人気がある。コロナ禍で公共交通機関の利用を避ける乗りものとしても注目を集めている。
だが、交通違反や事故が絶えない。たとえば、東京都内での事故の件数は1月~8月の8カ月間で39件。大阪府内での事故も昨年は1件だったのが、今年は8月までに8件だった。日本より早く普及し、200万人以上の利用者がいるフランスでは、2019年に利用者を12歳以上に限り、歩道での走行を禁止するなど規制を強化している。
なぜ違反や事故が相次いでいるのか。電動キックスケーターは道路交通法上、原付バイクに分類される。このため運転するには免許や自賠責保険への加入が必要だ。公道を走るためのヘッドライトやサイドミラーといった安全装置も欠かせない。ヘルメットの着用も求められる。それにもかかわらず、「免許やヘルメットがいるなんて知らなかった」という利用者が後を絶たないようだ。
「規制緩和」の方向で議論は進んでいるが…
このため、警察庁は取り締まりを強化する一方、昨年7月からは有識者による検討会をスタートさせ、電動キックスケーターなどの「小型電動モビリティー」(移動・輸送手段)の交通ルールの在り方を議論し、今年4月には中間報告をまとめた。
その中間報告では、小型電動モビリティーを3つに分類している。
②サイズが自転車と同じで時速15キロ以下のものは、運転免許が不要の「小型低速車」として自転車専用レーンでの走行を求める。
③時速15キロ以上は「原付きバイク」と同じ扱い。運転免許やナンバープレート、ヘルメットの着用を求め、車道しか走れない。
この記事で問題にしている電動キックスケーターは②に相当する。ただし、「時速15キロ以下」との条件が付き、現状では運転免許やヘルメット着用などが必要だ。
警察庁は来年3月までには最終報告をまとめるという。事態がややこしいのが、国土交通省、経済産業省、警察庁が、東京や大阪など全国9都府県の一部地域で昨年10月から「規制緩和の実証実験」を始めていることだ。