与党の圧勝、野党の惨敗で間違いないのだが…
第49回の衆院総選挙が10月31日に投開票された。自民党は公示前の276議席から議席数を減らしたが、単独で総定数465の過半数(233)を上回った。公明党と合わせ、与党の議席数は国会を安定的に運営できる絶対安定多数(261)を獲得した。
一方、野党の立憲民主党は100議席を割って敗れた。日本維新の会は議席を伸ばし、第3党に躍り出た。
首相指名選挙を行う特別国会が11月10日に召集される。岸田文雄首相は同日中に第2次岸田内閣を発足させる。1日午前、岸田首相は自民党本部で記者団に「政権選択選挙で与党が過半数を獲得できた。大変心強く思っている」と勝利の喜びを語った。
今回の衆院選、与党が圧勝し、野党が惨敗した。だが、それは獲得議席数の上での話である。沙鴎一歩の眼には自民党の終焉が見えてならない。
現職幹事長が落選するという異例の事態が発生
その理由は幹事長の甘利明氏(神奈川13区)が敗れたからである。甘利氏は当選連続12回の72歳のベテラン国会議員だ。現職の幹事長が小選挙区で敗北するのは初めてで、極めて異例だ。幹事長は選挙対策委員長以上に選挙全体を取り仕切って党を勝利に導く、義務と責任がある。その一番の責任者が落選するというのだからどう見ても前代未聞の事態だった。
比例で復活当選したものの、甘利氏は幹事長を辞任する意向を岸田首相に伝えている。31日のテレビのインタビューでは「進退は岸田首相にお預けする」と話していた。岸田首相は「最後は私が決める」と語っている。後任には外相の茂木敏允氏の名前が報じられている。
甘利氏は10月1日の自民党の役員人事で、幹事長に抜擢された。それまでは党税制調査会長を務めていた。甘利氏は元首相の安倍晋三氏や前財務相の麻生太郎氏にかなり近く、安倍、麻生、甘利各氏の頭文字を取って「3A」と呼ばれるラインで結ばれている。甘利氏の幹事長起用は、自民党の悪い体質を温存させるものだった。
自民党の悪い体質とは「ゆるみ」や「おごり」である。「アベ1強」といわれた安倍晋三政権は長期政権ゆえの弊害を生んだ。森友・加計の両学園疑惑や桜を見る会の問題、それに法相経験者が選挙違反事件で逮捕・起訴されるなどの前代未聞の事件だ。
甘利氏には現金授受の疑惑もあり、2016年には第2次安倍政権の経済再生担当相を辞任した。しかし、その説明責任は果たされていない。
有権者はそんな甘利氏に見切りを付けたのである。甘利氏が政権運営の要となる幹事長に就いている限り、自民党の中堅・若手議員が望む党内の改革はできない。有権者はその意志を示したのだといえるのではないか。