「丁寧で寛容な政治を進めていく」と記者会見
第2次岸田内閣が11月10日に発足した。この日、岸田文雄首相は首相官邸で記者会見し、「国民の信頼と共感を得ながら丁寧で寛容な政治を進めていく。この道以外に国民の信任を保つ道はない。そうした覚悟を新たにしながら政権を運営をする」と語った。
12月上旬には臨時国会が開かれ、経済対策を盛り込んだ2021年度の補正予算案が年内に成立する。
記者会見で岸田首相は数十兆円規模の経済対策を取りまとめる方針も示し、「コロナ禍で厳しい経済状況にある学生に対して就学を継続するための10万円の緊急給付金を支給する。事業者には昨年の持続化給付金並みの支援を施す」と述べた。憲法改正についても触れ、議論を推し進める考えを示した。
組閣人事では、外相に元文部科学相の林芳正氏を起用し、他の19人の大臣はいずれも再任とした。万博相の若宮健嗣氏の担当のうち、まち・ひと・しごと創生を「デジタル田園都市国家構想」に変更。首相補佐官には新たに国際人権問題担当として元防衛相の中谷元氏、女性活躍担当には元法相の森雅子氏をそれぞれ任命した。
安倍元首相と麻生副総裁は林氏の外相起用に反対した
今回の組閣の目玉は、林氏の外相起用である。
前幹事長の甘利明氏が衆院選(小選挙区)で敗れ、外相の茂木敏充氏が幹事長に就任した。この交代人事で、岸田首相は新たに外相を決める必要に迫られた。岸田首相自身は慰安婦問題を解決するための日韓合意(2015年12月)の締結で活躍するなど外相を4年7カ月務めた経験があり、外相への思い入れはどの政治家よりも強い。このため岸田派内でナンバー2の地位の存在で、信頼できる側近の林氏に外相を就任させることを決めた。
60歳の林氏は東大法学部卒で、自民党内では政策通として知られる。アメリカのハーバード大学に留学した経験を持ち、2017年12月からは日中友好議員連盟の会長を務めるなどの海外通でもある。
林氏の外相就任について、元首相の安倍晋三氏と自民党副総裁の麻生太郎氏は、当初反対していたと複数の新聞が報じている。林氏が日中友好議員連盟会長を務めていることから、「日本と中国との関係で国際社会に誤ったメッセージを与えかねない」と指摘したという。
しかし、岸田首相は「林氏外相」を取り下げなかった。なぜ押し通したのか。岸田政権は重要閣僚の官房長官や財務相を細田派(現・安倍派)や麻生派から登用している。組閣で岸田首相は自らの派閥の岸田派から外相という重要閣僚を出し、政権内のバランスを取りたいと考えたのだろう。
自民党では、幹事長の茂木氏や政調会長の高市早苗氏がすでに総裁選レースを走り出している。岸田首相には、林氏を外相に起用することによってポスト岸田を狙う林氏の存在を強くアピールしたいとの思惑もあるのだろう。