林氏「知中派でもいいが、媚中派ではいけない」

林氏は2012年9月の党総裁選に出馬した経験を持ち、首相就任への意欲を示している。BSフジの番組(11月8日放映)では、「知中派でもいいが、媚中派ではいけない。相手をよく知っているのは知らないよりいい」と話し、11日の外相就任の記者会見では日中友好議員連盟会長を辞任したことを明らかにした。

岸田首相は林氏の外相起用を押し通すことで、安倍、麻生両氏に自身の存在感を示したとも受け取れる。

岸田首相は「人の話を聞くこと」が信条だという。「丁寧で寛容な政治を進めていく」とも述べている。どちらも重要なことだが、首相という職務は、今回の林氏の起用のように、ときには自身の決断を貫く必要がある。今回の人事は、そうした意味で評価できる。

「安倍氏のくびきから脱却すべきだ」と毎日社説

11月11日付の毎日新聞の社説は大きな1本社説である。「第2次岸田内閣が発足 自立と実行力が問われる」との見出しを立て、冒頭部分でこう指摘する。

「第2次安倍晋三政権以降の9年間、異論に耳を貸さず数の力で押し切る国会運営が目立った。議会制民主主義がゆがめられた」
「安倍氏のくびきから脱却し、自身が思い描く新しい国の姿をどう実現するのか。首相の実行力が問われる」

頚木くびき」とは、牛車や馬車のながえの先に付け、牛馬の首に充てる横木のことである。「安倍氏のくびきから脱却」することは、岸田首相が首相として真に自立することを意味する。

毎日社説もこの先、岸田首相がキングメーカーの安倍氏らの支持を受けずに自らの政治理念を実現するよう、注文を付けている。

毎日社説は続けて指摘する。

「安倍氏ら保守派の反発が予想される中での林氏の起用だ。首相主導の政権運営を目指す『自立』への一歩となるかが焦点だ」
「首相は日米同盟を軸に中国に対抗しつつ、対話も模索する現実路線を目指す。ハト派の外相をどう生かすか手腕が試される」

沙鴎一歩はこの連載で度々指摘してきたように、経済と軍事の両面で巨大化した中国にどう対処していくかが日本や欧米など世界の国々にとって大きな課題である。

中国・北京の紫禁城
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