トヨタ「GR86」とスバル「BRZ」は両社協業で作り上げたスポーツカーだ。BRZは7月に発表、GR86も近々の発売を予定している。市場ではコンパクトカーやSUVが根強い人気なのにもかかわらず、両社はなぜスポーツカーを開発したのか。交通コメンテーターの西村直人さんが開発陣に話を聞いた――。
トヨタ「GR86」(左)とスバル「BRZ」(右)
画像=筆者撮影
トヨタ「GR86」(左)とスバル「BRZ」(右)

「トヨタ86」から「GR86」に車名を変更

トヨタ「GR86」とスバル「BRZ」は両社協業で作り上げたスポーツカーだ。初代(2012年発売)から続く協業もこれで2代目。

新型ではトヨタは86の車名を「トヨタ86」からGR86に変更した。狙いはトヨタが進める「GR」ブランドを新型のGR86でも追求することだ。

GRを端的に表現するなら「レースシーンからのフィードバック」だ。さまざまなカテゴリーの自動車レースで活躍する「TOYOTA GAZOO Racing」から得られた知見や技術を、我々が購入できる車両に導入したスポーツカーブランド(トヨタのWebサイトより)がGRである。

現在GRを名乗る車種は、コンパクトカー「ヤリス」からオフローダー「ランドクルーザー」まで多彩で、いずれも世界中から注目を浴びている。

GR各モデルには標準モデルと異なる外観などが与えられた。さらに、見た目だけでなくボディ剛性を高めたり、サスペンションなど走行性能を左右する部品をGR用に換装したりして、走りの質感もGRの名に恥じない仕様に高められた。

トヨタ「GR86」
画像=筆者撮影
トヨタ「GR86」

同じプラットフォームでも、乗り味はぜんぜん違う

一方のスバル。こちらの車名は変わらずBRZのままだが、GR86とはエンジン特性(出力やトルクなどカタログスペックは同一)、足回り、車体各部の結合方法が異なっている。初代でも乗り味の違いは設けられていたが、新型となってその範囲が拡げられたのだ。

エンジン特性の違いとしては、アクセルペダルを踏み込んだ際の出力特性とエンジントルクの関係がある。GR86ではレスポンスよく反応し駆動力として実感するまでの時間を狭めた。具体的にはペダル操作に対してグンと勢いがついて加速していく、そんなイメージだ。

BRZではアクセルペダル操作に比例するような素直な特性として、じんわり踏み込んでも、一気に深く踏み込んでも、ドライバーが意図した通りに加速する。

足回りでは、前後サスペンションのダンパーとバネのセットアップが2車で異なる。GR86はサーキットのカーブなどで積極的に後輪を滑らせて走るオーバーステア(ドリフト)走行に向いた設定だ。BRZは同じカーブでもドシッと安定した走りを示しつつ、ドリフト走行も許容する。電動パワーステアリングも足回りに合わせ2車それぞれの設定をもつ。

今回、両車のプロトタイプをサーキットで走らせたが、足回りの違いからくる乗り味は大きく違っていた。同じプラットフォーム(車体の土台)を使い、パッと見では相違点が少ない(比較すると相違点は多数ある)スポーツカーでありながらも、異なる乗り味をもつ意義がよくわかった。

スバル「BRZ」
画像提供=スバル
スバル「BRZ」