スポーツカーの走りを、コンパクトカー並みの価格で手に入れられる

販売台数の上では逆風が吹く国内のスポーツカー市場だが、クルマ作りのプロフェッショナルがメーカーの垣根を越えて作り上げたGR86とBRZには、スポーツカーにとって大切な、乗って楽しい要素がたくさんつまっている。これはプロトタイプ試乗でも体感できた。

車両価格にしてもがんばっている。今やコンパクトカーのハイブリッドモデルで必要な安全装備など追加していくと300万円の大台は超えてくるが、本格的なスポーツカーであるBRZは308万円から用意がある。まもなく発売を開始するGR86では200万円台のエントリーグレードも用意されるとの噂もある。

2車ともトランスミッションには初代と同じく6MTと6速ATを用意するが、MTの高い操作性能はもとより、新型となってATは大幅に性能を向上させた。走行モードを変更すると、スポーツ走行に最適な自動的なシフトダウンやギヤ段維持機能が働き爽快だ。

現時点、筆者はサーキット試乗のみなので公道でのフィーリングは別途レポートしたいが、少なくともトランスミッション違いでは走行性能に大きな違いはなく、どちらもれっきとしたスポーツカーの走り。筆者の愛車はND型のマツダ「ロードスター」なのでスポーツカー贔屓のところはあるかもしれないが、まずは読者の皆さんにも試乗いただきたい。

「BRZ」運転席の様子。視界が広く安全に走れる
画像=筆者撮影
「BRZ」運転席の様子。視界が広く安全に走れる

先代よりも進化した「先進安全技術」

また、先進安全技術も進化した。現時点ではATモデルのみとなるが、「衝突被害軽減ブレーキ」をはじめとした先進安全技術群である「アイサイト コアテクノロジー」がBRZには標準で装備される。おそらくGR86にも、名称は別として、ATモデルには同様の先進安全技術が装備されるだろう。2021年11月以降に発売される新型車には衝突被害軽減ブレーキの義務化が適応されるが、2車における早期の標準装備化は歓迎すべきだ。

もっとも「スポーツカーに先進安全技術?」と疑問符をつけたくなる気持ちは理解できるものの、混合交通となる公道を走る上でのリスクは皆同じ。スポーツカーだろうが、SUVやコンパクトカーであっても変わりはない。リスクヘッジを大切に考える若いドライバーが多いと聞くが、その意味でも訴求力は高まる。

人間には移動の欲求があり、移動することで喜びを感じるという。コロナ禍で一転した世の中だが、その移動を楽しくする新型スポーツカーGR86とBRZの登場は、まさしく前向きで上向きな出来事であると思う。

「BRZ」のメーター内にある運転支援機能の設定画面
画像=筆者撮影
「BRZ」のメーター内にある運転支援機能の設定画面
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