「宇宙の平和利用にとって先駆的な貢献」と自画自賛
10月16日、中国が有人宇宙船「神舟13号」を打ち上げ、その6時間半後には建設中の宇宙ステーションへのドッキングに成功した。女性1人を含む宇宙飛行士計3人が乗り移った。3人は半年間滞在する。計画では宇宙飛行士の宇宙空間における健康状態や生活への影響について調査するほか、建設にともない数回の船外活動も実施する。
中国は今後も実験棟や物資補給船を打ち上げ、来年12月には宇宙ステーションの建設を終了する予定だ。
宇宙ステーションの建設について中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は「われわれ人類の宇宙空間の平和利用にとって先駆的な貢献となるに違いない」と強調している。
だが、その言葉とは裏腹に、宇宙開発でもアメリカに対抗する習近平政権の覇権主義が顕著である。
宇宙ステーションは軍事転用が可能だ。たとえば、特殊なレーザー兵器やミサイルを搭載すれば、他国の人工衛星などを攻撃するキラー衛星にもなる。そうしたSF映画のようなことが現実になりつつある。
中国の宇宙空間の開発は軍部である人民解放軍と深く関係し、今回の宇宙飛行士の3人も空軍出身者だ。何が宇宙の平和利用なのか。どこが貢献なのだろうか。中国の宇宙開発はアメリカに対抗するための軍拡そのものなのである。
国際宇宙ステーションは3年後には運用期限を迎える
一方、国際宇宙ステーション(ISS)は基本的に日本、アメリカ、カナダ、ロシアのほかに欧州各国の計15カ国が参加協力している。2011年に完成し、複数の飛行士が半年から1年にわたって滞在して宇宙空間での実験を続けてきた。だが、残念ながら国際宇宙ステーションは老朽化が進み、2024年には運用期限となり、高度400キロの地球上空を周回する宇宙基地としての役目を終えるとみられている。
国際宇宙ステーションがなくなると、中国の宇宙ステーションが唯一となる可能性が高い。それだけに覇権主義の習近平政権は「宇宙強国」を目指し、宇宙空間の開発分野で国際的な影響力を強めようとしている。しかも中国は宇宙空間を自分たちのものとしか考えていないところがある。
今年は中国共産党の創建100年の節目の年に当たり、来年には5年に1度の共産党大会が開かれる。中国共産党は中国国家の上に位置する。その中国共産党史上、毛沢東に並ぶ存在を目指す習近平国家主席はこの党大会で「党主席」の地位に就き、おのれの政権の長期化を実現させようと必死だ。宇宙ステーションの建設をはじめとする宇宙空間の開発も、そのための演出のひとつなのである。