なぜ中国政府は、国際社会から非難されても、ウイグル族などへの弾圧をやめないのか。大学院大学至善館教授の橋爪大三郎さんは「中国の少数民族は漢民族より広いテリトリーを持っている。独立は国家の存亡にかかわるため、少数民族を抹殺するのではなく、『思想改造』で中国人につくり替えようとしている」という――。
※本稿は、橋爪大三郎、中田考『中国共産党帝国とウイグル』(集英社新書)の一部を再編集したものです。
なぜ中国共産党はウイグル人を“洗脳”しているのか
中国の本質をどう理解すればよいかについては、もう少し議論していきたいと思います。今現在、巨大な中国の過酷で凶暴な姿が露になりつつあります。これは想像を超えている部分があるので注意しなければなりません。
まずここまで過酷な類例を探すと、ナチズムがユダヤ人を虐殺したケースがある。あれは本当にひどいことをやった。中国はそこまではやってないじゃないか、というようにも見える。
ではなぜ中国共産党は、ウイグルの人びとを教育施設なるものに閉じ込めて、拷問や虐待をしながら思想改造をやっているのであろうか。今、ジェノサイドという言葉が出ましたが、ウイグル人の絶滅を願っているのなら、なぜ全員を殺さないのだろうか。
その理由は、もしも全員殺してしまったら、新疆ウイグルが中国であると主張する正当化の根拠がなくなってしまうからだと私は思う。新疆ウイグルがウイグル人の土地で、ウイグル人が中国人だから、新疆ウイグルは中国なのです。同じことは内モンゴルでもチベットでも言えます。
弾圧のために反対派を閉じ込めたり、処罰したり、殺したりしても、それは少数者であって、大部分の人は生かしておかなきゃならない。中国の公民として、中国人として。それでこそ、そこが中国であると言える。
そのための教育であり、思想改造なのです。