「すべての国民が成長の果実を享受できる新しい資本主義」

読売新聞の社説(10月15日付)は書き出しで「発足間もない岸田政権に信任を与えるか、共闘を強める野党に政権を担わせるか。重要な選択の機会である」と分かりやすく解説する。見出しも「政権の安定選ぶか転換図るか」である。

「安定」か「転換」か。岸田政権は発足まもないのにその勢いが弱い。野党は連合しつつあるとは言え、それぞれの政治思想は異なる。福島の原発事故の対応など旧民主党政権の体たらくを思うと、政権能力を疑ってしまう。今回の衆院選は有権者にとって難しい選択である。

読売社説は「岸田首相は記者会見で『すべての国民が成長の果実を享受できる新しい資本主義をつくる』と語った。与党で衆院過半数の233議席獲得を勝敗ラインに挙げた」と書き、こう指摘する。

「自民党は、安倍元首相の下で国政選挙に6連勝し、長期政権を築いた。だが、後継の菅前首相は1年あまりで退陣した。岸田首相が国民の審判を経て、安定政権を構築できるかどうかが問われる」

すべては選挙期間中の岸田首相の言動にかかっている。有権者は演説の言葉だけではなく、一挙一動すべてを観察している。国民のことを真に思う信念があれば、それは熱意として必ず有権者に伝わる。岸田首相は総裁選の出馬表明のときの気持ちに戻るべきである。そうすれば、衆院選勝利の兆しが見えてくる。

投開票日まで態度を決めない有権者も多くなりそう

保守を代表する読売社説だけに野党批判を忘れない。

「野党第1党の立民が共産党と選挙協力することで、支持が広がるかどうかも注目される」
「立民は日米同盟基軸を掲げるが、日米安保条約廃棄を主張する共産党との協力に矛盾はないか。丁寧な説明が不可欠となろう」

立憲民主党と共産党は根底の政治思想が異なる。共産党は立民が政権を取った場合、閣外協力を目指すというが、どう内閣の外から協力していくのか。そこがよく見えてこない。

10月15日付の産経新聞の社説(主張)は「今回の衆院選の最大の特徴は、日本が文字通り危機にある中での国政選挙という点だ」と指摘し、「危機を乗り越えるために、選挙後の政権には具体的政策を断行してもらう必要がある。衆院選が政権選択選挙であるという性格が今ほど痛感されるときはない」と訴える。

それゆえ、有権者にとって難しい選挙なのである。投開票日まで態度を決めない有権者も多いだろう。最後まで目を離せない選挙戦となりそうだ。