「令和版所得倍増」は所得が2倍になるという意味ではない
もうひとつ、総裁選での経済政策の目玉だった「令和版所得倍増」も取り下げてしまったようだ。この言葉は、国会での所信表明演説では触れられず、自民党の衆院選公約の政策パンフレットにも出てこない。一体どこに消えてしまったのか。
この件について、14日、山際大志郎・経済再生担当相は報道各社のインタビューで、「文字通りの『所得倍増』を指し示しているものではなく、多くの方が所得を上げられるような環境を作って、そういう社会にしていきたいということを示す言葉」と述べ、「令和版所得倍増」は所得が2倍になるという意味ではないとの認識を示している。
「令和版所得倍増」の詳細は、近く設置される「新しい資本主義実現会議」で議論するそうだが、そういう説明を受けて有権者はどう思うだろうか。バカにされていると思うのは、沙鴎一歩だけだろうか。
野党は200以上の選挙区で候補者を一本化した
衆院選は政権選択の選挙である。野党各党は政権交代を強く訴える。第1党の立憲民主党の枝野幸男代表は街頭演説などで「安倍・菅政権は国民の声を聞かず、不誠実な政治を一貫して進めてきた。10年近く続いてきた傍若無人な政治を終わらせる」と訴える。
立民は共産、国民民主、れいわ新選組、社民の4党と選挙協力の野党連合を推し進め、すでに小選挙区289のうち、200以上の選挙区で候補者を一本化した。
衆院の定数は465議席(小選挙区289、比例選176)である。自民、公明両党の解散時の勢力は305議席(自民党276、公明党29)で、立民の解散時の勢力は110議席だった。
岸田首相は衆院選の勝敗ラインを「与党で過半数確保」とする。つまり自民党と公明党の獲得議席が合わせて「233議席」を取れないと負けになる。
岸田政権の不人気に対し、野党は勢いがある。自民党内からは楽勝ムードが消え、過半数割れを心配する声も出ている。
ところで内閣発足から10日後の衆院解散は戦後最も短い。解散から投開票までは戦後最短の初の17日間となる。異例の短期決戦だ。衆院選挙は安倍政権での2017年10月以来、4年ぶりだ。衆院議員の任期満了日(10月21日)以降に実施される衆院選は、現行の憲法下で初めて。今回の衆院選は異例ずくめなのである。