イスラエルでは3回接種で感染予防効果が11倍に

厚生労働省が新型コロナワクチンの3回目の追加接種の実施を決めた。2回の接種を終えても感染してしまう「ブレイクスルー感染」のリスクに対応するためだ。厚労省は希望するすべての国民に対する2回接種を10月~11月の早い時期に終えた後、年内に3回目の追加接種を医師や看護師ら医療従事者からスタートし、年明けには高齢者の接種を始めるという。

新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種を受けるイスラエルのベネット首相(左)の母親(中央)
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新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種を受けるイスラエルのベネット首相(左)の母親(中央)=2021年8月3日、イスラエル・ハイファ

すでにイスラエル、フランス、ドイツが重症化しやすい人を対象に3回目の追加接種を開始している。アメリカも9月22日、FDA(米食品医薬品局)が2回目の接種から6カ月経過した65歳以上の高齢者などに対する3回目の追加接種を許可した。

イスラエルでは3回接種した人が2回接種の人に比べ、感染を防ぐ効果が11倍も高くなったとの調査結果が報告される一方で、データが少なく検証が不十分との指摘もある。

アフリカ諸国は「ワクチンのアパルトヘイト」と訴える

3回目の追加接種を行うことによってその地域や国の感染の拡大を収束させることはできるが、パンデミック(地球規模の感染)を抑え込むのは不可能だ。

9月23日、ニューヨークの国連本部で行われた国連総会の一般討論演説で、アフリカ・ナミビアの大統領が新型コロナワクチンの先進国への偏りを批判してこう語った。

「3回目の追加接種の人がいる一方で、世界では大勢の人が1回目をずっと待っている。ワクチンのアパルトヘイト(人種隔離)だ。すべての人が安全にならない限り、だれも安全ではない」

ほかのアフリカ諸国の首脳たちも次々と「ワクチンアパルトヘイト」を批判した。1回目の接種を受けた人の割合は、ナミビアでわずか全人口の9.6%に過ぎず、アフリカ全体では6.3%しかいない。

これに対し、イスラエルでは70%近くが1回目の接種を終えている。日本でも50%以上が2回の接種を受け(9月13日の政府発表)、感染者数は8月下旬をピークに急減し、9月30日には全国で緊急事態宣言とまん延防止重点措置が解除された。先進国と途上国のワクチン格差は歴然としている。

大規模接種センター
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この格差を減らすため、WHO(世界保健機関)が主導して2020年に発足させたのが、「COVAX(コバックス)」である。先進国が新型コロナワクチンを共同購入して途上国に分配する国際的な枠組みだ。しかし、現状は資金不足などから十分に機能していない。