「接種証明の実用化を急げ」と産経社説
9月15日付の産経新聞の社説(主張)はその書き出しから「新型コロナウイルスの流行が世界的に収束しない中で社会経済活動を再開するには、ワクチンの接種率を高めて、新たな生活様式を作っていくしかない」と訴え、こう指摘する。
「行動制限緩和の鍵となるのは、ワクチンの接種や、PCR検査で陰性だったことを示す『証明』の発行である」
見出しも「ワクチン完了5割 接種証明の実用化を急げ」だが、産経社説はどんな接種証明が適当だと考えるのか。
「国内でワクチンの2回接種を完了した人が50.9%と対象者の半数を超えた。これを好機と捉え、取得しやすく、携帯しやすい全国共通の証明の仕組みを、早急に整えるべきだ」
そうした証明の仕組みについて、具体的な議論は行われていない。そんな状況で接種証明を導入すれば混乱が予想される。接種証明ありきとするのは拙速ではないだろうか。
半年から1年ほど経過すると、免疫力は落ちてしまう
産経社説はこうも訴える。
「健康上の理由でワクチンを打てない人もいる。証明がワクチン接種の強制や、打たない人への罰則につながることを避けるのは当然だ。一方で不平等の批判を恐れるあまり、特典を設けることに躊躇してもならない」
接種から半年から1年ほど経過すると、ワクチンで獲得できた免疫力は落ちることがわかっている。接種証明を接種からどのくらいの期間有効とするのか。3回目の追加接種をこの接種証明にどう組み入れるのか。ある程度は海外の例を参考にできるが、日本と欧米では習慣も考え方も生活様式も異なる。頼りになるデータも少ない。
接種証明に前向きな産経社説はこうした点をどう考えるのだろうか。その辺りまで突っ込んで主張する必要があるだろう。