世界のできる限り多くの人がワクチンを打つ必要がある

菅義偉首相も9月25日、国連総会で「ワクチンの公平なアクセスの確保が極めて重要だ。これまで各国や地域に供給してきたワクチンを追加し、合わせて6000万回分を供給したい」とのビデオ演説を行った。経済的にも余裕のある日本や欧米諸国がアフリカなどの途上国にワクチンを提供するのは当然のことである。

WHOがパンデミックを宣言したのが、2020年3月11日だった。それ以降、新型コロナの感染拡大は世界中で起きている。このパンデミックを抑え込むには、世界のできる限り多くの人々が感染予防効果のあるワクチンを打つ必要がある。日本や欧米の先進国が追加接種によって感染の収束を目指すことは重要だが、世界のどこかの国で感染が続く限り、収束したはずの国でも感染が再発する。

問題は自分の国さえ助かればいいという考え方である。自国第一主義は感染症には通じない。COVAXなどを通じて途上国へのワクチン供給を進めることは、自分の国を感染から守ることにつながる。

これは「二者択一」の問題ではない

これまでの不活化ワクチンとは大きく異なり、ウイルスそのものを使わないmRNAワクチンの製造スピードはかなり速く、その分、製造量は多い。さらに感染を予防したり、重症化を防いだりする効果も高い。

経済的に余裕のある日本や欧米の先進国が3回目の追加接種によって感染の収束を目指すことも欠かせない。高い免疫力を維持することができるからだ。時間の経過とともに接種効果が低下する以上、新型コロナのワクチンも今年だけの接種では不十分で、感染状況やワクチンの供給量を見ながら毎年接種することを検討する必要がある。

先進国は国内で感染の火が上るのを防ぐとともに外の火事も消火する必要がある。ワクチン援助を受ける途上国は、国内の配送システムや保管設備を整えるなど準備に力を注ぎたい。

もはや、ワクチンの「3回目の追加接種」か、「途上国への供給か」という二者択一の問題ではない。片方だけではパンデミックは決して抑制できない。