「感染をどこまで社会が許容するか」と日経社説

全国紙のなかで唯一、ストレートに3回目の追加接種の問題を取り上げていたのが、9月16日付の日経新聞の社説である。その社説は「追加接種に向け万全の準備を」との見出しを付けてこう書き出す。

「政府は新型コロナウイルスワクチンの追加接種に向けた検討を始める。国内外の知見を吟味した上で必要になるとの前提で、準備に万全を期してもらいたい」

先進国の欧米が先に踏み切っている以上、国際的にも日本だけが実施しないわけにもいかない事情もある。だからこそ、万全の準備は怠ってはならない。

日経社説はこう指摘する。

「厚生労働省は17日、導入に向け専門家を交えた議論を始める。まず検討すべきは対象者をどうするかである」
「1回目、2回目に続く必須の3回目接種とするか、年齢や基礎疾患などで対象者を絞る追加的な接種にとどめるかの判断が要る」

「必須」か「対象の限定」か。これまでの厚労省の説明だと、まだその辺りが見えてこない。3回目の追加接種は年内に始まる。厚労省は走りながら検討するつもりなのか。

感染に対する許容範囲を一律に定めることは難しい

日経社説は「追加接種の是非では米食品医薬品局(FDA)や世界保健機関(WHO)の専門家らが13日、否定的見解を示した」とも指摘するが、WHOはともかく、最終的にFDAは3回目の追加接種を認めている。

さらに日経社説は「追加接種の判断は感染をどこまで社会が許容するかの議論にもつながるだろう」とも書く。

社会にはゼロリスクを求める人もいれば、軽症で済むならある程度の感染は仕方がないと考える人もいる。高齢者や基礎疾患のある健康弱者の存在を考慮する必要もある。感染に対する許容範囲を一律に定めることは難しい。それゆえ議論が求められるのだ。

最後に日経社説は「追加接種を急ぐあまり、2回接種を終えていない人たちが取り残されることがあってはならない」と主張する。厚労省や自治体は希望するすべての国民が2回の接種を終了していることをしっかり確認してほしい。