今年8月、甲子園球場で初めて女子硬式野球の決勝戦が行われた。スポーツライターの本條強さんは「これまで女子選手は、女性という理由だけで甲子園に立てなかった。高野連にはぜひとも規定を考え直してほしい」という――。
甲子園初の高校女子野球・決勝戦
高校球児の聖地、甲子園球場に野球のユニフォームを着た女子高生が集まっていた。真っ黒に日焼けした50人の笑顔が西日に照らされ輝いている。半分が神戸弘陵高校女子野球部、あとの半分が高知中央高校女子野球部。8月23日午後5時、これから甲子園初の女子公式戦、全国高校女子硬式野球選手権大会の決勝戦が行われるのだ。
神戸弘陵は14年に女子野球部が創立、2年後の夏に優勝を果たし、その後春の選抜で18、19年と2連覇を果たしている。一方、高知中央は3年前に創立したばかりだが、躍進著しく初優勝を狙う。どちらが勝っても歴史的な甲子園での優勝ということになる。
夕日を浴びた甲子園で試合が始まる。両チームとも守備が抜群にうまい。まずはこれに驚かされる。内野は巧みにゴロをさばき、スローイングも的確。外野も縦横無尽に走り、飛球をナイスキャッチ。投手もストライクゾーンにビシビシ投げ込む。塁間やバッテリー間などすべて男子と同じ規格。猛練習を積まなければそんなプレーはできない。
しかも打撃も鋭い。金属バットを短く握りシャープに当ててくる。芯に当てれば長打も出る。バッティング練習もしっかり行ってきた結果だ。しかもボールに向かってダイビングキャッチ、ヘッドスライディングを行うなど、体を張った泥だらけのプレーを随所に見せた。
プロ野球解説者の張本勲氏は男子顔負けの好プレーに目を細める。「女子でここまでやれるとは、しかも硬式。難しいですよ」。元智弁和歌山野球部監督の高嶋仁氏も「みんなうまい」と女子野球のレベルの高さに舌を巻く。女子野球なんてと高をくくっていた人は観戦して一様に驚いたはずだ。「いやあ、面白かった。野球ファンが増えるよ」と張本氏は言い切った。