いつかは自分の高校で出場したい

今や淡路島の立派な女子野球部となった蒼開高は18年に創部したが部員は0。翌年4人が入部し連合丹波から夏の選手権に出場した。4人は毎日木製バットを素振りし、金属バットでの飛距離を伸ばした。その1人、日野口加奈は今年の大会、晴れて蒼開高の1番打者として出場しランニングホームランを奪った。6番の市野あいは三塁打を放って追加点を挙げ、チームは初勝利を遂げている。

開会式で選手宣誓をした日本ウェルネス主将の柳川愛奈は3人で始まった女子野球部を経て今年初代キャプテンとしてチームを率いた。「感謝を一投一打に込めて全力でプレーします」と誓った。感謝とは昨年コロナ禍での中止から今年の開催、さらに決勝戦が甲子園で行われることだ。「このチャンスは私たちにとっての宝物です」とも述べた。

最初は連合チームでもいつかは自分の高校で出場したい。その情熱はすべて「野球がしたい」、そして「甲子園に出たい」という二つの願いによる。甲子園で行われる夏の男子の高校野球を観て、野球女子たちは「いつか自分もあそこに立ちたい」と願い続けて野球を必死に続けてきたのだ。

バッティング練習をする野球少女
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです

野球への情熱に大人は寄り添うべきだ

野球をやっていなくても高校野球やプロ野球の女性ファンはとても多い。その中には自分もやってみたかった、また、やってみたいという女性も多いだろう。そして、野球はやってみた者でなければわからない奥深さと喜びがある。グラウンドの土の匂いやグローブの革の匂い、白球の飛翔やバットの快音。試合での緊張感や戦略、そして興奮。すべてがドラマである。

そして、子供の頃から男子と一緒に野球を始め、甲子園を夢見てきた高校野球の女子たちの野球への情熱は並々ならぬものがある。先にも述べたが、女子野球部が住んでいる家の近くにあればいいが、現状は県内にひとつもないという所もある。それであれば、高校は公立私立にかかわらず、女子で野球をしたいという生徒がいれば、すぐにでも女子野球部の創立を認めて上げてほしい。

部員が9人いなくても、連合丹波で出場可能となるかもしれない。今年準優勝した高知中央は女子部ができた時は男子が使用するグラウンドの端っこで打撃練習さえできなかった。練習は鉄パイプの素振り。こうしたことを乗り越えて、優勝にあと一歩まで上り詰めている。

“今年だけ”で終わらせてはいけない

今年は女子も甲子園での決勝が実現したが、これは全日本女子野球連盟と高野連が意見交換をした中から議題として持ち上がり、まず高野連が動き出し、事務局長の積極的な働きかけもあった。

元阪神タイガースの木戸克彦氏が侍ジャパン女子代表ヘッドコーチに就任して女子野球の振興に尽力、この案件では甲子園球場と阪神電鉄を口説いた。また、近鉄バッファローズで活躍、三沢高校時代は球史に残る激闘を演じた太田幸司氏が再三にわたって「女子の決勝を甲子園で」と訴えてきたことも大きい。