市中感染7人で警戒レベルを1ランクアップ

台湾の今回の市中感染拡大は、4月中旬頃からその兆候が見えていた。花蓮市在住で日本料理店を経営している溝渕剛氏は、「ぽろぽろと本土感染が出て来て、嫌な感じは漂っていた」と証言している。

台湾の台北で、フェイスマスクを着用した人が交差点を横断している
写真=iStock.com/Travel Wild
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4月下旬にはコロナ対策を統括する中央感染症指揮センターが、複数の感染者が立ち寄った場所と時間帯を公開。注意喚起を行い、感染者の発見に努めていた。この時点で、同センターは感染爆発の可能性を考えていたのかもしれない。

5月10日に3人、11日には7人の新規感染者が確認された。台湾では1年ぶりの、感染源不明の市中感染例も含まれていた。この段階で、中央感染症指揮センターは全国の警戒レベルを1段階上の「第2級」に強化。三密場所でのマスクの着用の義務化(罰金あり)、室内100人以上、屋外500人以上の集会禁止などの徹底を国民や官民の機関に求めた。

スマホでQRコードを読み取るだけの追跡アプリ

その後、5月15日には台北市と新北市の警戒レベルを「第3級」に上げ、19日にはそれを全国に適用した。外出時は常にマスク着用が義務付けられ、室内5人以上、室外10人以上の集会は禁止。警察、医療、公的機関、ライフライン関連事業を除く建物・施設は閉鎖を命じられた。

第3級の宣言は昨年のコロナ禍発生以降初めてのことで、さらに国民の緊張は高まった。検査業務の再強化やCOVID-19専用病床の再開、防疫ホテル・隔離施設の拡大に加え、地方自治体が独自の迅速な対応を行えるような権限譲渡も発表された。

さらに、クラスター発生時の濃厚接触者の追跡と本人への通知を容易にするため、交通機関や店舗の利用時に連絡先と利用時間を登録する「実聯制」の利用も推奨された(登録した情報は28日間を過ぎると削除される)。もとは備え付けの用紙に書き込む仕組みだったが、その後スマホで店頭のQRコードを読み取り、メッセージを送信するだけで登録が完了する無料アプリだ。

実聯制アプリの利用は個々人の任意で、強制や罰金などの規定はないが、国民のほとんどが応じているとされる。台湾の、ITを駆使した実効性と汎用はんよう性のある社会制度インフラ構築力には驚かされる。