デルタ株の拡大抑止にほぼ成功

徹底したクラスター調査と厳格な隔離処置、機動的に拡大した圧倒的な検査量、さらに水際対策の一層の強化によって、台湾の保健当局はデルタ株の市中への再流出を防いだ。最終的に17人のデルタ株感染者が発見されたが、そのほとんどは隔離者の中からで、国内での感染拡大はほぼ防げている状況だ。

5月末から6月はじめにかけてのピーク時には600人を超えた1日の新規感染者数は、ひと月ほどで急減。9月に入ってからは6日の16人を除けば、ひと桁代にとどまっている。8月23日には、台湾自前の国産ワクチンの接種が始まり、蔡英文総統も自ら率先して接種を受けている。

政治的指導力、行政能力、有事対応能力、経済力、技術開発力などを遺憾なく発揮して、台湾は昨年からのコロナ禍というピンチを見事にチャンスに変えている。欧米のメディアでは、台湾が人権や自由を奪わない形で、民主的な法治国家としてコロナを制圧していることへの賛辞が多い。欧米諸国の多くは台湾が独裁国家・共産国家と対峙たいじしてくれたことをしっかり認めており、昨年からの各国の台湾への対応にもそれが明らかに表れている。

国民の健康、安全、生活を守る意志があるのか

スピード、事実の開示、公開報道、的確かつ厳格な対応、そして国民への結果の報告。どれを取っても台湾の感染症対策には隙がない。なぜ、日本にそれができないのか。

海外からの変異株の流入に無頓着で、公開される情報は断片的。デマや虚報を放置し、国民は正確な情報がどこにあるかも分からない状態だ。いつも後手後手の対応に、もはやイジメにも近い終わりの見えない自粛要請。緊急事態宣言のゴール設定もなく、日本の政府当局はただただ嵐が過ぎ去るのを待っているだけのようにすら見える。国民の健康、安全、生活を守っていこうとする意志より、政治闘争ばかりが見え隠れする。

冷静な読者であれば、日本が残念な国に成り果てていること、台湾や世界から学ぶ点が多々あることに気付くのではないだろうか。

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