2024年1月13日の「第16任総統副総統及第11回立法院選挙」について、筆者は昨年末12月24日から現地入りして取材をはじめた(昨年10月、11月にも訪台)。1月には台湾中央選挙委員会の発行する取材許可証をもらい、1月9日には民主進歩党の賴清德/蕭美琴、11日には中国国民党の侯友宜/趙少康、12日には台湾民衆党の柯文哲/吳欣盈(それぞれ総統候補/副総統候補)の国際記者会見にも参加することができた。
また、11日からのテレビ東京への取材協力、さらに作家の門田隆将氏の取材同行でも、多くの気づきや学びがあった。ここで今回の選挙結果の「なぜ」と、結果が示す「意味」を考えてみたいと思う。
事前予想よりも接戦での決着
すでにご存じの通り、民進党の賴清德副総統と蕭美琴前台湾駐米代表が、次期第16任(16代)総統/副総統になることが決まった。得票数は558万6000票、全体の40.05%で、2位の国民党・侯友宜/趙少康両候補に、約91万5000票、6.56%の差をつけての勝利であった。
直前の筆者の個人的予想は、頼/蕭42%、侯/趙34%、柯/吳26%で、100万票以上の差で民進党陣営の勝ち、というものだった。しかし、実際の予想は難しく錯綜していた。どの陣営もそれなりに盛り上がっていて、誰も諦めていなかった。誰の情報を信じるかで予想はまったく異なってくる。
取材してもまったく当てにならない。なぜなら一般的には「台湾人同士の政治話は御法度」で、街頭でいくらインタビューをしても、人々は建前しか語らないからだ。結局、目の前で起こっている事実を、多くのヒアリングと交えて分析しなければならない。
投票日前日にたまたま乗ったタクシーの運転手と雑談した際、「賭のヤマは80万票差を超えるかどうかだよ」という話を聞いた。予想が難しかったこの選挙で、結果が91万票差であることを考えると、やはり闇の世界はすごいと思い知らされた。総統選と同時に行われた立法院(一院制議会)選挙では、定数113議席のうち国民党が52議席を獲得して第1党となり、民進党は51議席で、両党とも単独過半数を獲得できなかった。民衆党は8議席を獲得、他に無党籍の候補者が2議席を占めた。