国民が選んだ「今の民進党外交の継続」

そして1月13日、台湾国民は総じて蔡英文さいえいぶん総統の8年を肯定して、「政権交代」ではなく、三期目の「政権のバトンタッチ」を選んだのだ。これは台湾人にとっては勇気のいる決断だったはずである。今回、テレビ局の取材などで30人近くの台湾人にインタビューを行ったが、「腐敗はダメ」「大企業との癒着がひどい」「民進党は派閥争いしかしていない」「すでに昔の民進党ではない」との声も少なからず聞こえた。

それでも台湾国民は、最終的に民進党の「今の中国との距離感」「今まで培ってきた西洋諸国との連携」を選んだのである。

台北市内で開かれた民進党支持者の集会
撮影=藤重太
新北市板橋運動場で行われた民進党投票前日最終応援集会(2024年1月12日)

滞在中に数々行った街頭インタビューで「台湾有事や、緊張が高まる危険性などは怖くないですか」と意地悪な質問をあえて行った。その回答の多くは「攻撃するのは中国側、私たちには関係ない」「台湾は独自でやれることをやるだけ」「国家は常時、有事にあります」「自分たちの選んだことで、そうなったらしかたがない」「台湾有事って何ですか。日本には有事がないのですか」と、意識の高い回答ばかりで舌を巻いた。

高い関心を寄せた欧米メディア

1月9日から12日までに4回(民進党、外交部、国民党、民衆党)行われた国際記者会見の会場には、世界20カ国から約130人の外国人記者が集まった(主催者発表)。筆者も参加したが、特に欧米メディアの高い関心が印象的だった。積極的に厳しい質問を候補者にぶつけ、熱い質疑応答を繰り広げる彼らの姿に、なんとなく日本との格差を感じた。

また、1月13日の投票日までに来日した外国マスコミ関係者や外国要人(政治関係者)は6000人を超えているとも発表された(新聞発表)。筆者も、投票日前日の最後の応援集会や投票日当日の開票会場を訪れたが、欧米のメディアがとても熱く報道している姿に、世界が注目している台湾の実力を思い知らされた。