「感染者数」「重症者数」だけで何がわかるというのか

一方、日本では感染者数や重症者数といった抽象的な「数」ばかりが強調され、台湾のように感染の実態がわかる具体的内容はあまり積極的に開示されない。聞こえてくるのは有名人の感染ネタや批判評論・言い訳・愚痴ばかりで、いったいどこが危険で、どういう行動が危ないのかよく分からない。

そんな状況でただやみくもに「危ない」「自粛せよ」と呼びかけられても、実感がわかない。実際に苦しんでいる感染者や重症者の顔、実際に現場で戦っている医療従事者の声は、数字からは見えないし聞こえない。「かけ声ばかりで真実が見えない」、これがコロナをめぐる日本政府のメッセージが国民に通じない、響かない、根本的な原因なのではないだろうか。

感染症との戦いは、ある種の「有事」対応である。正確な情報を国民に開示し、先手を打って感染拡大を防いでいく姿勢を見せることこそ、国民の危機意識を醸成し、国民の安全を守る初歩の初歩ではないだろうか。台湾と比べると日本の対応は常に後手後手で、手法もその目的もひどくあいまいに見える。

デルタ株初流入に台湾が見せた「鬼対応」

世界中で新たな感染拡大の元凶となったデルタ株への対応でも、台湾は際立った動きを見せた。台湾中央感染症指揮センターが、台湾で初めてデルタ株の感染者を確認したと発表したのは6月26日。ペルーからの帰国者を起点にしたクラスターであることも同時に報告された。

台湾当局はすぐに接触者の特定を急いだ。最終的には「濃厚接触者との接触者」まで隔離範囲を拡大し、この案件での接触者隔離は700人あまりに及んだ。さらに、感染者や濃厚接触者が立ち寄ったとされる箇所の該当者すべてに徹底した検査を行い、その検査数は延べ1万5000件近くに達したとされる。

国内感染ゼロを続けていた台湾では、一般国民向けの大規模なPCR検査の必要がなく、市中感染が拡大する前の今年4月下旬の数字では、1日あたりのPCR検査数は750件程度にすぎなかった。だが感染拡大の傾向を把握した途端、検査規模を一気に拡大。6月中には人口比でみれば日本の3倍近くまで検査数を増やしている。