クレーム以上、トラブル未満が発生したら
結論から言いましょう。
トラブルは、出来事自体では大きくならない。
情報の流れ方で、大きくなる。それが世の中です。
世の中の人間関係は、「正しかった人」が勝つゲームではありません。「情報を最後までコントロールできた人」が、傷を最小限に抑えられるゲームです。こんなふうに言うと、「被害を受けた側が我慢しろと言うのか」と反発する人がいるかもしれません。でも、そうではありません。
言いたいことは、もっと単純です。
問題が起きた瞬間、人は出来事そのものよりも、「誰に話すか」という第二段階で、その後の人生を大きく変えてしまうということです。
実は、多くの事件はトラブルではありません。単なるクレームでもありません。その中間にあります。
一方が、傷ついた。もう一方は、悪意がなかったと言う。どちらにも、それぞれの言い分がある。この「クレーム以上、トラブル未満」の領域こそが、人間関係がいちばん難しくなる場所です。
例えば昔の職場なら、こういう出来事は現場で終わりました。上司が呼び出し、「今回はここまでにしよう」と言う。双方が納得したかどうかは別として、とりあえず仕事は続く。それで社会は回っていました。
ところが、今は違います。
情報は一度外に出ると「物語」になる
会社や組織という閉じた空間より、インターネットという開いた空間のほうが断然強くなりました。
一度外へ出た情報は、誰のものでもなくなります。最初に話した人のものでもない。書いた記者のものでもない。読んだ人たちが、それぞれ勝手に「物語」を作り始めます。
すると本来は、当事者2人だけの出来事だったはずなのに、数万人、数十万人が“陪審員”になります。
ここで起きるのが、「事実」と「物語」の逆転です。
人は事実だけでは判断しません。
「この人は昔からこういう人だったに違いない」
「きっと今回も同じことをしたんだろう」
「いや、逆に陥れられたんじゃないか」
れっきとした証拠がなくても、頭の中でストーリーが完成してしまいます。
なぜなら人間の脳は空白を嫌うから、分からない部分を「想像」で埋めてしまう。だからネットでは、「知らない」が一番少ない答えになります。
みんな、何かを知っていることになってしまう。


