相談相手を間違えると解決不可能になる
でも、本当は、誰も実際に起きたことを知りません。ここが怖いところです。
さらに厄介なのは、「相談」と「告発」が同じものではないことです。相談とは、解決するために話すことです。告発とは、知らせるために話すことです。似ているようで、じつは目的がまったく違う。理屈臭く言えば、相談は未来を変えようとしますが、告発は過去を確定させようとする。
だから、相談相手を間違えると、解決できたかもしれない問題までもが、解決不可能になります。
これは会社だけではありません。学校でも家庭でも同じです。友人同士でも同じこと。
例えば、あなたが仕事の現場で傷つくことを誰かに言われたとします。まず、本人と話す。つまり、直談判です。それでも改善しなければ上司に話す。さらに組織が動かなければ、外部に相談する。
この順番には意味があります。「事態を改善できる人」から順に知らせる仕組みになっているからです。逆に、一番最後のカードから切ると、もう後戻りはできません。SNSに書いた瞬間、その問題は本人たちの手元を離れます。
「じゃあSNSに書くな、と言うのか」と反発があるでしょう。そうではありません。組織が何もしない。相談窓口も機能しない。証拠も握り潰される――そういう状況では、外へ向かって声を上げるしかない場合もあります。
トラブルで“稼ぐ”人も現れる
ただ、その瞬間に、問題は「解決」から「社会問題」へとがらりと姿が変わります。
社会問題になれば、多くの人は助けてくれます。でも、その代わりに、あなた自身も物語の登場人物になります。その覚悟は必要です。損得勘定のうえに社会は成り立っていますから、トラブルで“稼ぐ”人が現れるのも、自然ななりゆきです。
そうなる前に、できることがある。
前述したように、「誰に相談するか」を間違えないことです。そしてもしも、あなたが相談された立場であれば、慎重にするべきなのは、最初の返答です。
返事には、大きく3つあるでしょう。
1つ目は、「大変だったね。まず、何があったのか順番に話してください」。感情を受け止めながら、事実を急がない返事です。
2つ目は、「今、どうしたい? 相手に伝えたいのか、それとも私に聞いてほしいだけですか」。相談なのか、解決なのか、あるいは気持ちを整理したいだけなのか。目的を確認する返事です。
3つ目は、「この話は、あなたと私だけで考える話? それとも誰かに入ってもらったほうがいいですか」。問題を大きくするのではなく、適切な場所へ運ぶための返事です。
この3つに共通しているのは、「誰が悪いか」を決めていないことです。

