工事現場では必ず見かける交通誘導員とはどんな仕事なのか。70代から交通誘導員を始めた柏耕一さんは「日当は1万円程度。ただし、資格や勤務数によって手当てが割増される。ある同僚は60勤務をこなして1カ月で67万円を稼いだ」という――。

※本稿は、柏耕一『交通誘導員ヨレヨレ日記』(三五館シンシャ)の一部を再編集したものです。

道路工事で交通案内する写真
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女子大生よりも安い時給で働かされるベテランたち

これまで私が勤めた警備会社4社について言えば、自宅から現場への交通費が出ない会社が1社、70歳以上では日当が1000円安くなる会社が1社あったが、おしなべて9000円前後の日当を払っていた。

私はそれでも感謝していたが、同じように同僚で元営業マンの橋本は「会社が営業して、われわれに警備の仕事を取ってきてくれるんです。不満を言うなんて罰があたります」と真面目な顔をして言う。

私自身は出版編集の本業もあるので、これまで警備会社とは各社ともアルバイト契約である。社員契約の警備員は厚生年金や雇用保険料を天引きされるので、かなり頑張らないとさほど手元に残らない。

話を戻すと夜勤はプラス1000円、2級資格を持つ者はさらに1000円の手当がつく。隊長手当を月1万円、さらに年末には寸志(私は2万5000円)を支給する会社もある。とはいえ1社問題のある会社があった。

私が3番目に勤めた会社である。募集広告では他社との対抗上1万円の日当で警備員を集めていた。18歳以上なら未経験者でも最初から1万円だが、会社はこれを研修時に「同僚には聞かれても口外するな」と口止めしていた。

なぜなら10年以上のベテラン警備員が8000円で、遅刻ばかりして片側交通誘導がまったくできない女子大生のアルバイトが1万円という日当の逆転現象が起きていたからである。

口止めしてもムダである。「タウンワーク」などの広告媒体で大きく広告を打っているのだから隊員が知らないはずはない。ベテラン隊員の不満はたまる。

知り合いの70歳過ぎで15年の経験を持つ温厚な警備員は、我慢の限界を超えたため会社の副社長にこの件で抗議したところ、翌日になって辞めてほしいと会社から通告されてしまった(彼は常駐勤務地に参入している他の警備会社にそのまま転職した)。