研修後の手当てや、入社祝い金を出す会社も

またこの会社のある支社では一時に20名以上の集団離職が起きたと聞いた。

こういう矛盾を抱えている会社は絶対大きくなれないし、将来他社との競争に勝ち抜くことはできないだろう。これが業界では中堅の会社というから、警備会社には口入れ屋的な前近代的な感覚がまだ残っているのだろうか。

募集広告を見ていると大手とされる警備会社では日当1万1000円以上出すところもあれば、8000円前後の弱小警備会社もみられる。とはいえ高齢者が手っ取り早く仕事をして収入を得たいと考えれば、警備員が一番かもしれない。

自己破産者でなく健康で日本語がしゃべれれば面接で落とされることはまずない。法定研修(4日間)を受ければ3万円前後の手当をすぐ受け取れる。入社祝い金も6万円ほど出すところもあり、その上、3000円、4000円の面接交通費を当日支給する会社さえある。

通帳と1万円札
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私が2番目に入った警備会社はこの面接交通費を3000円支給していた。世の中にはとんでもないことを考える人がいるもので、ある男はこの会社に入るふりをして1日で千葉県や東京都の支社をいくつか回っているうちこれがバレてしまった。

今はパソコンで面接管理の共有もしているので、そういうやからの悪企みはすぐバレてしまうのだ。

35歳で月に67万円を稼いだ同僚

再度、話は戻る。警備員も普通に働けば月18万円くらいになると書いたが、これはあくまでも一般論である。

転職2度目の会社に在籍していた頃、35歳くらいの同僚から聞いた話で、月67万円稼いだ警備員がいるという。彼の同い年の友人・芝浜で、その給与明細も見せてもらったとのことである。私はその話を聞いてにわかに信じられなかった。

彼の話によると芝浜は月60勤務をしたそうだ。ということは昼夜1カ月働き詰めで60勤務になる。そんなことが可能なのか。眠る時間もないではないか。

普通は昼の勤務は午前8時から夕方5時まで拘束される。夜勤は午後8時から翌朝5時までとなる。会社によっては午後10時開始のところもある。忙しい時期の警備会社は人手不足だ。日勤のみならず夜勤まで頑張る隊員は大事にして優先的にいい現場を回すはずだ。

いい現場とは、「警備の仕事がラク」「時間が早く終わる」「精神的肉体的ストレスが少ない」ということで、会社はその辺はよく把握している。となると芝浜のような人材は優先的にそういう現場に回してあげる。

周囲の警備員も昼夜勤務の芝浜に配置や時間で負担が少ないように配慮する。その上、その会社では月22勤務以上は2300円から2500円前後の割増手当が1勤務ごとにつく。クルマで現場を移動すれば睡眠は車内でとれる。早終いなら家に帰ることもできる。

2級資格を持っていればなおさら好都合だ。それやこれやで67万円ということらしい。しかし、これは若い人しかできないことだろう。体力プラスどうしてもまとまった金が必要というモチベーションがなければできることではない。