長男の生活費で5000万円の貯蓄を失う

【家族構成】
父親 10年前に死亡
母親 86歳 要介護2 
長女 60歳 既婚
長男(当事者) 57歳
次女 55歳 既婚

【家計・資産状況】
貯蓄 970万円
収入 母親 年金収入 130万円
長男は無職
支出 年間380万円程度

長男の生活費は家賃を含め年250万円、母親は遺族年金で細々と…

長男の生活費は、6万3000円のアパート代を含めて、月に18万円程度。年間に直すと216万円になるが、このほかにiPhoneや家電の買い替え代、アパートの更新料などの特別支出を加えると、年間では250万円くらいかかっているらしい。ざっくりとだが、20年間で5000万円も、親の貯蓄を使った計算になる。

父親の存命中は、企業年金も含めた年金収入があったため、長男の生活費以外で赤字になる月は少なかったそうだが、父親が亡くなってからの収入は年130万円の遺族年金のみ。母親の生活費だけでも、毎月赤字が出てしまっている。支出は、長男の生活費などを含めて年380万円だ。赤字は現状、年250万円。父親が亡くなった後は、貯蓄の減るペースがいっそう加速しているのが現実だ。

ミニチュアのごみ箱に入れられた一万円札
写真=iStock.com/frema
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実家の窮状を見かねた姉のBさんは、5年くらい前からAさんに、家に戻るように説得している。だが何度頼んでも、Aさんは首を縦には振らず、最近では電話にも出てくれないようになり、アパートに足を運ぶと居留守を使われてしまうのだそう。

Aさんも、親の貯蓄が減っている現状は理解しているが、Bさんが「どうするつもりなの?」と尋ねたときに返ってくるのは、「お金が尽きたら死んでやるから、俺にかまうな」という話ばかり。お金の話が出そうになると、耳をふさいで大きな声を出すなど、話が聞こえないように妨害される機会も少なくないという。

もはや母親には、年間で250万円かかっているAさんの生活費を、捻出する余力はない。加えて、要介護2の判定を受けている母親の生活自体も、ヘルパーに頼っているとはいえ、かなりの不便が生じている。