障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などに支障が出た場合に、現役世代を含め、受け取ることができる年金だ。障害基礎年金(2級)および障害年金生活者支援給付金の合計で年約84万円、仮に20~80歳まで受給すると計5000万円超だが、受給にはクリアすべき要件がある。現在25歳のうつ病の女性は当初、要件を満たしていないと判断されたが、その後、10代の頃に受診した診療データが残っていることがわかり、受給することができるようになった――。
白いカップに入ったエスプレッソを手に持つ女性
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「あなたの娘さんは障害年金を請求することができません」

「長女はうつ病を抱えており、症状が重い時は布団から起き上がることもできません。一日中寝ていることもあります」

ある日、筆者のもとへマネー相談に訪れた母親(53)はひきこもりの長女(25)のことについて語りだしました。うつ病で働ける状態ではなく、収入の見通しも立たないため医師に相談をしたそうです。すると医師から「障害年金を請求してみてはどうか?」というアドバイスを受けました。

その後、母親は長女の代理で市役所の年金課へ相談に行きました。しかし、そこで全く予想もしなかった説明を受けてしまったのです。

母親は当時のことを思い出しながら語気を強めました。

「市役所の職員の方から『保険料の納付要件を満たしていないので、障害年金は請求することができません』と言われてしまいました。でも、長女の国民年金は20歳当時の分から現在まで父親がきちんと払っているので未納ではありません。何だかおかしいですよね?」

それを聞いた筆者の脳裏には悪い予感がよぎりました。確認のため、筆者はいくつか質問をすることにしました。

「ご長女様が初めて病院に行った日はいつ頃ですか?」
「大学在学中だったので21歳頃です」
「国民年金の保険料は20歳になった当時から遅れずにきちんと支払っていましたか?」

この質問で母親の顔は急に曇りだしました。

「当時、長女も親も大学生であれば勝手に学生の免除(本来は「学生納付特例」という)になると思っていました。長女が社会人になったら本人がさかのぼってまとめて支払うつもりでいたので、保険料は支払わず、何も手続きをせずにそのままにしていました……。でも長女が大学を退学した後に親がまとめて支払っています。それなら未納ではありませんよね?」
「すると保険料をまとめて支払ったのは、初めて病院に行った日よりも後ということですよね?」
「はい。そうなります」

母親は何がいけないのか? というような顔をしています……。