「請求が通るかはわからないですが、可能性はゼロではありません」

そこまで説明した後、母親に筆者の意見を伝えることにしました。

「もちろん、ご長女様のケースで内科が初診として認められるかどうかは今のところわかりません。こればかりは『請求してみないと結果はわからない』というのが正直なところです。ですが可能性はゼロではありません。請求してみる価値はあると思います」
「可能性が少しでもあるのなら請求してみたいです。具体的にはどのような行動からすればよいのでしょうか?」
「まずは内科に問い合わせをしてみるところから始めます。初診日の証明は、医師の書く書類(受診状況等証明書)ですることになるからです。さらに病歴・就労状況等申立書という書類に17歳当時の様子を詳細に記入する必要があります。17歳が初診であることを主張するためです。なお、病歴・就労状況等申立書は医師ではなくご本人やご家族の方が記入します」

すると母親は自信なさげにつぶやきました。

「いわゆる作文みたいなものですよね? 果たして私たちにできるものなのでしょうか」
「その点に関しては当時の様子をさらに詳しく教えていただければ、私のほうで病歴・就労状況等申立書の作成のお手伝いをすることができます」

それを聞いた母親はほっとした表情を見せました。

「請求に向けて動き出す前に、まずはお母様からご長女様に事情を説明していただき同意を取るようにしてください」
「わかりました。長女にも伝えます」

母親は力強くうなずきました。暗闇の中をさまよっていた家族に一筋の光が差し込んだようにも見えました。

薄暗い部屋に座り込む孤独な女性
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

その後、長女の同意も無事得られたので、まずは内科に問い合わせをすることにしました。すると内科には当時のカルテがまだ残っており、しかも内科から精神科へ紹介状を書いていたことも判明しました。

内科の医師にお願いしたところ、初診日の証明書は書いてもらえることになりました。

念のため筆者は精神科の病院で紹介状のコピーももらうことにしました。

次は病歴・就労状況等申立書の作成です。体調を崩した17歳頃の様子、内科に初めて受診したときの様子、その後通院していた頃の様子などをご家族から詳細に聞き取り、内科が初診であることを主張する文章を書きました。最後に診断書やその他の添付書類もそろえ、障害年金の請求をしました。