「無理やり結婚させた私がいけなかった」出戻り次女を悔やむ65歳母
少し戸惑った様子の母親(65)から相談が寄せられました。母親は次女(35)と暮らしているのですが、その次女のひきこもり問題を心配する長女(38)から、あれこれアドバイスされて何が正しいのかわからなくなって困っているというものでした。
母親は夫と二人で工務店を営んできましたが、5年前、夫の死を機に店をたたみました。その後、まだ実家で暮らしていた次女を結婚させ、母親は一人でのんびり暮らしていたのです。そうもいかなくなったのは、次女が結婚2年で実家に戻ってきたことに端を発します。
次女はもともとおとなしい性格で、これまで親に大きな負担をかけたことはありません。短大卒業後に就職した会社でまじめに働いていて何ら問題はありませんでしたが、母親にとっての気がかりは、いつまでも結婚する様子の見えないことだったようです。
夫は病気がわかってから1年ほどで亡くなりました。手厚い医療を受けられたので、別れは寂しくても納得している部分もありましたが、次女の花嫁姿を夫に見せられなかったことだけは心残りでした。
あちこち手を尽くし、次女に結婚を強く勧めて肩の荷を下ろしたのですが、次女の結婚は長続きしなかったのです。結婚相手と次女のどちらにも非があったと言えばあるでしょうし、なかったと言えばなかったとも言える結婚生活で、先方の親御さんとも、仕方ないですねという感じで離婚が成立したのです。
「結婚することは当然」と考えてきた母親は、少しやつれて戻ってきた次女に対して、自分が結婚を強く勧めたせいと責任を感じたこともあり、実家でゆっくり過ごしてほしいと願いました。次女との二人暮らしは1年を越えましたが、母親にとってはなかなか居心地の良い時間のようです。
夫の死後、次女の結婚前も二人で暮らしていましたが、結婚させなくてはとあせるあまり、次女との暮らしを楽しんだ覚えがないことが影響しているのかもしれません。また、夫の生前は工務店が忙しく、子育てと仕事と家事にてんてこ舞いだったため、子どもとのゆっくりとおだやかな初めての時間が新鮮でもあるようです。
次女は積極的に外に出ないものの、友人から誘われれば2回に1回は食事や映画に出かけていきますし、母親が日帰り温泉や買い物に誘えば車の運転を引き受けて同行してくれます。段取りよく家事をこなし、中学生のころからの趣味である手芸の作品をネットで販売するなど、日常を楽しんでいるように見えます。
母親は、次女がいつかまた結婚してくれたら安心なんだけど……という思いがわき上がってくることもあるそうですが、次女と二人で静かに暮らしていきたいという気持ちも強いようです。
「私が相続すべき財産を先払いしてくれてもいいよ」
そのような暮らしの中、夫の闘病中もあまり実家に寄り付かなかった長女が、たびたび訪ねてくるようになりました。
長女によると、次女は世間でいう「ひきこもり」や「ニート」というものに該当し、「8050問題」が危惧されるから早めに対処しなければいけないと言うのです。母親の財産を次女に食いつぶされるのを見ていられない、お母さんが暮らしていけなくなったらどうするの、とても心配だとも言います。そして、母親に万一のことがあった場合に備えて、「キチンと一筆書いておいてね」と暗に遺言書を書くように何度も話題に出すのです。
そして、重い腰を上げようとしない母親に対して、最近は、母親の相続時に長女が受け取るべき財産を先払いしてくれてもいい、というようなことを言ってくるようになっているのでした。