就活時に面接官から自己否定されるような発言をされ続け、心が折れた長男は自室に閉じこもった。「自分はダメ人間。みんなそう思っている」。人の視線が気になり、物音にも敏感に。そのうち、窓の外から監視されているという妄想にも襲われた。その症状を訴えたにもかかわらず、親は「放っておけばよくなる」と病院での診察を受けさせなかった。その後、約15年。40歳になった長男は診察の結果、統合失調症で認知機能の低下も認められた――。
壁によりかかり、顔を覆う男性
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

70歳母の苦悩「42歳長男はもう一生働けません」

「長男は42歳、もう一生働くことはできないでしょう」

そう言い切る母親の顔には疲労の色が濃く浮かんでいました。しかし、長男は40代前半。まだまだ挽回できる年齢です。そう感じた筆者は次のような質問をしてみました。

「正社員でフルタイム勤務は難しいかもしれませんが、パートやアルバイトの就労はどうでしょうか? 49歳までなら就労支援などのサポートも充実していますし、諦めるのは早いかもしれません」

それに対し母親は首を小さく左右に振るだけ。長男の就労はかなり厳しそうだ、ということが伝わってきました。

現状を把握するため、筆者は家族構成などから伺うことにしました。

【家族構成】
母親 70歳
長男 42歳
父親は2年前に死亡
【家族の収支と財産】
母親の老齢年金および遺族年金 月額約18万円
生活費など 月額約18万円(※)
※年金収入の範囲内生活するよう努力しているが、赤字が出る月もあるとのこと

預貯金 400万円
自宅の土地 1200万円

母親は今回の相談内容について語りだしました。

「長男は働いて収入を得ることが難しく、わが家にはお金に余裕もありません。親子ともお金に不安を抱えています。そこで長男の通院先の医師に相談したところ、障害年金を請求するよう勧められました」