父親が末期がんで他界。40歳になった長男の病状はさらに悪化

ようやく転機が訪れたのは長男が40歳になった頃。父親が末期がんで亡くなりました。身内が亡くなったというショックのためか、長男にはさらに心配な行動が現れるようになってしまいました。

用もないのに自室とリビングを行ったり来たり。幻聴を振り払うためなのか、頭を激しく振ったり、壁に自ら頭をぶつけたり。

「明らかに長男の様子がおかしい」。そう思った母親は何度も何度も長男を説得し、やっと近所のメンタルクリニックを受診させることにしました。

医師に長男の症状を訴えると、小さなクリニックではどうすることもできないので、大学病院で診てもらうよう指示されました。紹介状を書いてもらい、すぐに大学病院を受診。長男は統合失調症と診断され、即入院が決定しました。3カ月ほど入院し、退院後は自宅に戻って月に1~2回の通院を継続してきたそうです。

現在42歳の長男は、薬を飲んでは一日のほとんどを横になって静かに休むといった生活を送っています。治療は継続していますが、それでも幻聴が治まることはありません。

「いつまで怠けているんだ。早く働け」
「働く? お前なんかが働けるようになるわけないだろ」

といったものがほぼ一日中続いてしまうそうです。

ベッドメイクされていないベッド
写真=iStock.com/Guilherme Ruiz
※写真はイメージです

さらに長男には認知機能障害も現れてしまいました。認知機能とは、記憶力、思考力、判断力、注意力、計画力、実行力などをいい、認知機能障害になるとそれらの機能が低下してしまいます。長男の場合、記憶力が大幅に低下してしまいました。

母親に向かって「今日は何日?」「何曜日?」「薬飲んだっけ?」「今、何をしようとしていたっけ? 母さんわかる?」といった質問を一日に何度も何度も繰り返してしまうそうです。

長男は炊事、掃除、洗濯、服薬管理、買い物などは全くできません。それらはすべて高齢の母親が行っています。また、母親が長男に毎日着替えや入浴をするよう言い聞かせても、1週間のうち1~2回できればよい方。1カ月同じ服を着ていることもあるそうです。

ここまで話を聞く限り、長男の症状はかなり重いので障害年金受給の可能性は高いものと思われました。長男が40歳の時に初めて受診した時、長男は国民年金に加入中。国民年金の保険料は20代前半の頃は未納だったようですが、それ以降はきちんと支払ってきているとのこと。以上のことから、長男は障害基礎年金を請求することになります。