年金暮らしの70代の夫婦は42歳の長男と同居している。長男は有名私大に入学したものの、中退。その後、20年以上、「働く意味がわからない」と仕事をせずに読書するのみ。自宅と5000万円の預貯金を持つ両親がファイナンシャル・プランナーの村井英一さんにシミュレーションしてもらったところ、長男が90歳まで生活できるようにするには、両親は90歳超まで死ぬことができないことが判明した――。
本を読む女性
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有名私大に合格したが、中退「働く意味わからない」と20年無職

今の日本人の平均寿命は、男性が81.64歳、女性は87.74歳です。ただ、これは数が少ないながらも若くして亡くなった方も含めての平均ですので、実際は半数以上の人がこれより長生きしています。年々少しずつ伸びていることも踏まえ、ひきこもりのお子さんの家計シミュレーションをする際には、念のため90歳ぐらいまで分析するようにします。それまでに貯蓄が底をつかなければ、お子さんの生活設計は成り立ちます。

今回、ひきこもりの40代の長男の相談に来た、都内在住の70代の夫婦の場合も、長男が90歳までのシミュレーションを作成しましたが、途中で貯蓄が枯渇する見通しになってしまいました。このままでは将来が心配です。

家族構成
・父親:75歳(年金生活) 年金額285万円
・母親:73歳(年金生活) 年金額95万円
・長男:42歳(無職)
・次男:37歳(会社員) 独立別居し家庭を持っている
資産
・預貯金(夫婦):約5000万円
・自宅:戸建て持ち家

今回の相談者(夫75、妻73)には2人の息子がいて、次男(37)は大学卒業後に就職し、現在は結婚もして自立した生活を送っています。それに対して、長男(42)は仕事をせず、親と同居でひきこもり状態です。といっても、まったく自室から出ないわけではなく、日中は一人で外出もします。難しい書籍を買ってきては自室で読みふけっています。

長男は子供の頃から優秀で、有名な私立大学に進学しました。しかし、半年もすると「思っていた学問と違う」と大学を休みがちになりました。結局、大学は退学してしまいましたが、かといって就職するわけでもなく、「働く意味がわからない」と読書に没頭しています。

親としては、できれば大学を卒業してほしかったのですが、それはかなわなくても仕事には就いてほしいと、就労体験や自立支援の講座を勧めましたが、本人にその気はありません。長男は大学中退後、収入を得ないまま20年以上の月日が経過しました。現在、夫婦ともにリタイア生活ですが、世帯で約400万円の年金収入があり当面の生活資金に困っているわけではありませんので、もう最近ではあきらめ気味です。