両親は金融資産5000万円あるが…長男が70代の頃に底をつく

「このままの状態が続くと思うのですが、息子は生活していくことができるのでしょうか?」

長男が40歳になり、自立を目指すことよりも、このままの状態で生きていけるのかを心配するようになり、私の事務所を訪ねてきました。

私は、両親から状況を伺いながら、長男の将来の状況をシミュレーションしていきます。

父親は、現役時代はサラリーマンとしては比較的収入が多く、そのために現在は平均より多い額の年金をもらっています。家族は以前も現在も堅実な生活をしており、支出はそれほど多くはありません。そのために、一戸建ての自宅の他に金融資産は約5000万円があり、長男は比較的恵まれていると言えるでしょう。

それでも、長男が今後もまったく働かないという前提でシミュレーション(父親は87歳で、母親は90歳で他界と想定)をしてみると、長男の老後は安泰とは言えません。現在住んでいる自宅はそのまま長男が相続し、金融資産は兄弟で均等に相続するという仮定で分析しても、三十数年後の70代で長男の貯蓄は底をつきます。もちろんかなり先のことですので、ただちに心配する必要はありませんが、もう少し改善できれば、親亡き後の長男の生活は安心できるようになります。

将来の家計状況シミュレーション

私からは資金計画の改善を提案していきます。

「すぐに心配する状況ではありませんが、できればもう少し改善したいところですね。例えば、普段の支出を見直して、少し節約を心がけてみてはいかがでしょうか。生活費を1割削減できれば、状況はかなり改善します。長男が80代になっても貯蓄はプラスを維持することができます」

「そんなにぜいたくをしているわけではないし、旅行も行っていません。これ以上節約しろと言われても難しいと思います」(母親)
「長男の書籍代がけっこうかかっていますが、それをやめると、本当に自室から出なくなってしまいます。ある程度は認めてあげたいものです」(父親)

そう言われてしまうと、私からはそれ以上には言えません。収入がないからといって、本人にまったく使わせないようにすることがよいとは限りません。むしろ外出の機会を奪ってしまうという見方もあります。