就職氷河期世代の男性(40)はこれまで一度も働いたことがない。半ばひきこもり状態であることを、実家で同居する年金暮らしの父親(73)からたびたび叱責され、関係は悪い。父親がファイナンシャルプランナーに家計相談すると、一定の資産があるおかげで、両親が他界後、長男が80代になっても赤字転落は免れることがわかった。それにより父親の不安や焦りは軽減されたものの、“一生無職”を貫く長男の老後のために身代わりで払う代償の大きさとは――。
ドミノ
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就職氷河期世代の40歳男性、努力はしたが働かないまま今に至る

私(ファイナンシャルプランナー)の事務所は東京にありますが、面談による相談だけでなく、郵送での相談も受け付けています。地方にお住まいの方も東京に来ることなく相談できるようにと始めましたが、コロナ禍で面談を避けるために利用する人も増えました。

今回ご紹介するのは、5年ほど前の相談ですので、新型コロナとは関係ありませんが、郵送でのご相談の申込みでした。

【家族構成】
・父親:73歳(年金生活)年金額198万円
・母親:70歳(年金生活)年金額85万円
・長男:40歳(無職)
【資産】
・預貯金:約3500万円
・自宅:戸建て持ち家
【家計】
・収入 年283万円(夫婦年金合計)
・支出 年252万円
(内訳)
生活費 年210万円(月17万5000円)
住居費 年30万円
保険料 年12万円

73歳父「社会復帰をさせ、自立した生活ができるようにしたい」

ご相談を申し込んできたのは父親(73)です。子供は息子(40)ひとりですが、ひきこもり状態で仕事をしていません。大学卒業時は就職氷河期で、就職が決まらないまま卒業を迎えてしまいました。資格取得を目指したものの、なかなか試験に合格できず、就職もしないままに時間だけが経過し、ますます就職が難しくなってしまいました。

親は、長男が仕事をするようにと、いろいろと手を打ちましたが、うまくいきませんでした。結局、一度も働いたことがありません。特に父親は仕事をしない長男をたびたび叱責しましたが、本人はかえって心を閉ざしてしまい、ひきこもり状態になってしまったそうです。

今では親子の会話もほとんどありません。

手紙の文面では、「なんとか社会復帰をさせ、自立した生活ができるようにしたい」と、父親の心境がつづられていました。