池江璃花子選手が登場するSK-Ⅱのショートムービーが話題になっています。10分もある動画の中に商品は一切登場せず、スキンケアのスの字もありません。P&Gにはどのような狙いがあるのでしょうか。桶谷功さんは「これは今、マーケティング界で注目されている手法の1つです」と話します――。
商品が一切出てこないSK-Ⅱのショートムービー
こんにちは、桶谷功です。
水泳の池江璃花子選手が復帰するまでのストーリーを描いたショートムービー「センターレーン」が、スキンケアブランドSK-Ⅱのサイトで公開され、話題になっているのをご存じでしょうか。
監督を務めたのは、2018年に『万引き家族』がカンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した巨匠・是枝裕和監督。
センターレーンとは、いちばん強い選手のためのプール中央のコースのこと。動画の冒頭で池江選手は「センターレーンが好きです」と語ります。しかし闘病中はプールに入ることもできないし、復帰直後はプールの一番はじで泳ぐことになる。是枝監督は、そんな彼女の心境をアニメーションを交えて描いていきます。
最後はセンターレーンに立つ池江選手の、「ちょっとしたことで運命や未来は簡単に変わる」という言葉のあとに、「その意志が運命を変える」というメッセージで締めくくられる。
この約10分の動画のなかに、SK-Ⅱの商品はまったく出てきません。池江選手が肌の手入れをするシーンすら、一切なし。SK-Ⅱはいったい何のために(おそらくは高い製作費をかけて)、この動画を製作したのでしょうか。