池江璃花子選手が登場するSK-Ⅱのショートムービーが話題になっています。10分もある動画の中に商品は一切登場せず、スキンケアのスの字もありません。P&Gにはどのような狙いがあるのでしょうか。桶谷功さんは「これは今、マーケティング界で注目されている手法の1つです」と話します――。
女子100メートルバタフライで優勝し笑顔を見せる池江璃花子(中央、ルネサンス)。左は2位の長谷川涼香(東京ドーム)、右は3位の相馬あい(ミキハウス)=6日、千葉県国際総合水泳場
写真=時事通信フォト
女子100メートルバタフライで優勝し笑顔を見せる池江璃花子(中央、ルネサンス)。左は2位の長谷川涼香(東京ドーム)、右は3位の相馬あい(ミキハウス)=6日、千葉県国際総合水泳場

商品が一切出てこないSK-Ⅱのショートムービー

こんにちは、桶谷功です。

水泳の池江璃花子選手が復帰するまでのストーリーを描いたショートムービー「センターレーン」が、スキンケアブランドSK-Ⅱのサイトで公開され、話題になっているのをご存じでしょうか。

3月に公開された池江選手のショートムービー「センターレーン」は今もSK-Ⅱのサイトから視聴できる
3月に公開された池江選手のショートムービー「センターレーン」は今もSK-Ⅱのサイトから視聴できる。(写真提供=SK-Ⅱ)

監督を務めたのは、2018年に『万引き家族』がカンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した巨匠・是枝裕和監督。

センターレーンとは、いちばん強い選手のためのプール中央のコースのこと。動画の冒頭で池江選手は「センターレーンが好きです」と語ります。しかし闘病中はプールに入ることもできないし、復帰直後はプールの一番はじで泳ぐことになる。是枝監督は、そんな彼女の心境をアニメーションを交えて描いていきます。

最後はセンターレーンに立つ池江選手の、「ちょっとしたことで運命や未来は簡単に変わる」という言葉のあとに、「その意志が運命を変える」というメッセージで締めくくられる。

この約10分の動画のなかに、SK-Ⅱの商品はまったく出てきません。池江選手が肌の手入れをするシーンすら、一切なし。SK-Ⅱはいったい何のために(おそらくは高い製作費をかけて)、この動画を製作したのでしょうか。