無印良品のレトルトカレーは、専門店にもないようなマニアックなカレーがある。なぜそこまでこだわっているのか。ライターのトイアンナさんは「無印良品のレトルトカレーを製造するにしき食品の戦略が影響している。同社は小ロット生産に強みがあり、その特徴がマニアックな品ぞろえを生むことになった」という――。

本格的な味で種類も豊富な無印のレトルトカレー

無印良品のカレーはおいしい。

これは、レトルトカレー好きには、かなり知られていることだ。ラインナップは40種類以上。「プーパッポン」「マサレマ」といった、聞き慣れないマニアックなラインナップも並ぶ。そして、どれも一度、食べれば忘れられない本格的な味なのだ。

素材を生かしたカレー プーパッポン(蟹と卵のカレー)
写真提供=良品計画
素材を生かしたカレー プーパッポン(蟹と卵のカレー)

これまで日本人には受け入れられないと考えられてきたカレーを、人気商品に育ててることができたのはなぜか。それはひとえに無印良品のブランドの強さにある。

無印良品のカレーを支えてきた「NISHIKIYA KITCHEN」

無印良品は長らく「本当に良質なものを、手の届く価格で届ける」というブランディングを続けてきた。

衣料品、家電、インテリアなど、生活周りのあらゆるカテゴリへ、ブランド名を記載しなくても無印良品だと伝わる上質で洗練されたデザインを広めることに成功している。

さらに、無印良品はリーズナブルな価格帯であるにもかかわらず、持つことで「デザインにこだわっている人」「良質なものを選んでいる人」と思わせることにも成功した。

無印良品を持つ人に「洗練されている」という印象がつけば、今度は「洗練されているように見せたい人」が無印良品を選ぶようになる。この良質なサイクルが、無印良品のユーザーを増やしてきた。

だが、いくら無印ブランドがあろうが、食品の場合、おいしくなければヒットしはない。どんなにマーケティングがうまくても、質が悪い製品はリピートされないからだ。なぜ無印良品のカレーは、種類が豊富なのに、どれも質が高いのか。その裏には、カレーを生産している「NISHIKIYA KITCHEN」というブランドの下支えがある。