日本にいる約123万人のシングルマザーの2割が登録している婚活アプリがある。アプリ全体の登録者は145万人で、そのうち7割は離婚歴ありの「バツイチ」だ。なぜそうした人たちがここまで集まるサービスとなったのか。ライターのトイアンナさんがリポートする――。
一緒に携帯電話を使っている二人の女性
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マッチングアプリ業界は超レッドオーシャン

マッチングアプリ市場が急速に拡大している。リクルートブライダル総研によると、2020年に成婚したカップルは27.2%が婚活サービスを活用している。その大半はマッチングアプリだ。マッチングアプリは、日本の非婚化・少子化を食い止める新たな要となりつつある。

そして、需要あるところには供給が集まる。現在、主なマッチングアプリだけでも30個以上ある。私のところにも「マッチングアプリ事業を立ち上げたい」という相談をいただくこともあるが、よほど差別化できるポイントがなければ創業は勧めていない。現在のマッチングアプリ業界は、超レッドオーシャンなのだ。

そんな業界で、ひときわ目立つアプリがある。2016年にサービスを開始した「マリッシュ」だ。その特徴はシングルマザーの登録が多いこと。日本にいる123万人のシングルマザー(母子世帯)(*1)の2割にあたる約25万人の登録がある。アプリ全体の登録者は150万人で、男女比はほぼ同じ。出会いを探す人にとって、十分な規模がある。

どうやって、多くのユーザーを集めたのだろうか。シングルマザーは全国に散らばっているうえ、属性に共通点があるとは言いがたい。広告を出す際に「シングルマザーを狙ってください」と言われたら、ターゲット選定に少し悩んでしまうだろう。そのような、簡単には狙いづらい層に届くサービスを提供している……。もしかして、そこには破天荒な戦略があるのではないか?

そんな思いを胸に、マリッシュの代表である飯田一寿さんと創業に参画した坂田健一さんにお話を伺った。

(*1)厚生労働省の資料による。「母子世帯」には母子以外の同居者がいる世帯を含む。