1人の行動がすべてを「無」にする

自衛隊では、駐屯地や基地で多くの隊員が集団生活をしています。集団生活では、わずかなほころびが、大きなダメージとなることがあります。

新型コロナウイルスの例がわかりやすいでしょう。仮に1000人中999人までは示された規範に沿って行動していたとしても、わずか1人でも感染リスクの高い危険地帯に入り込み、勝手な行動をしてしまうと、隊内でクラスターが発生する危険性が一気に高まります。

いくら感染対策をしていても、1人の危険な行動によって、感染拡大の原因を作ることになってしまうのです。

さらに、感染してしまったにもかかわらず、その事実を誰にも告げず、部隊生活を行っていたとしたら、感染拡大の封じ込めは、ほぼ不可能になってしまいます。たった1人の行動がすべての努力を水の泡にしてしまうのです。

これは、新型コロナウイルスの問題に限りません。

二見 龍『自衛隊式セルフコントロール』(講談社ビーシー/講談社)
二見 龍『自衛隊式セルフコントロール』(講談社ビーシー/講談社)

仕事の場面などにも、危険への誘惑が潜んでいます。「顧客情報を漏らしてしまう」などもってのほかですが、「1人、2人ならバレはしまい」などと、深く考えず、外部へと流出させてしまう可能性があります。また、自分のミスを隠すため、「ちょっとだけ数字の操作を」と思うことがあるかもしれません。

こうした行為は、コンプライアンス違反として、のちのち企業に大きなダメージを与える可能性があります。最悪の場合、企業生命にかかわる問題に発展することがありますから、絶対にやってはいけません。

「マズイかも」と認識しながらも気持ちが動いてしまうときや、他者から誘惑があったときなどは、今一度冷静な我に立ち返り、自身の立ち位置と責任を考えてみてください。

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