自衛隊式「災害に備えるポイント」

また、災害時を想定して注意しておきたいのが、ケガのリスクについてです。

災害が起きた場合、どこでケガを負う可能性があるのか、1日を過ごす場所ごとに区分して、洗い出しておきましょう。多くの人は、家と職場、そして家と職場をつなぐ通勤ルートがそれにあたると思われます。

家の中で弱点となるのは寝ているときです。寝ているときにタンスや本棚、テレビなどの重いものが倒れてくるような状態は、命にかかわるほど危険です。また、廊下や階段、玄関に物を積んでいるのもダメです。避難経路が遮断されるだけでなく、物が少なく安全を確保しやすい場所の廊下が、災害時に役に立たないからです。

いざというときの安全確保のためには、寝室のレイアウトを見直し、家具の転倒防止処置や避難経路の廊下や階段、玄関をクリアに整理しておくことが大事です。家の中では目をつぶっていても行きたいところへ行けるようにしておくと、真っ暗闇や四つんいになっての避難が必要なときでも行動ができます。

災害は勤務中に起きる可能性もあります。職場に潜む危険も検討しておきましょう。オフィスの窓ガラスが割れたり、照明が落下したりする可能性があります。ビル街の通りでは、ガラスや看板などの構築物が落下してくる可能性もあるでしょう。

自身の行動圏の中で、どこに危険が潜んでいるのか、想像力を働かせて事前に把握しておく必要があります。そして、いざというときには、むやみに外に出ない、あるいはやむをえず外に出るときは、落下物の被害を受けにくい道路の中央よりを歩くなど、慎重な行動が求められます。

災害の風景
写真=iStock.com/vicnt
※写真はイメージです

火災もまた大きな脅威となります。とくに地震後の火災は被害を大きくしがちです。出火元の想定、非常口の確認とそこへの経路を日頃から確認しておきます。

いざというとき、行動に移せるかどうかは、日頃の準備にかかっています。オフィスビルで、毎日同じエレベーターばかりを使うのではなく、階段を利用してみる、普段とは違うエントランスを利用してみるなど、偵察し、血肉化しておきましょう。

地雷クラスター対策とコロナ対策は同じ

たとえば、地雷が設置されていて、「立ち入ると触雷しょくらい(地雷を踏んでしまうこと)の危険があります」と警告板が設置されていれば、わざわざ足を踏み入れる人はいないでしょう。

しかし、危険な場所につねに注意書きがあるとは限りません。また、危険度も一定というわけではありません。

たとえば、地雷原は、埋設している地雷の密度によって触雷の確率が変わります。ある範囲の中に地雷を何個設置するかを示すときは「クラスター」という表現をします。密度2であれば、一直線に地雷原を歩いていくと必ず2回触雷することを示しています。密度が高ければ高いほど、触雷の危険度は高まりますから、そういった場所は絶対に近寄ってはならないと判断できるでしょう。

この地雷の例は、新型コロナウイルスへの対応と照らし合わせると理解してもらいやすいでしょう。

クラスターが発生した場所の多くは、触雷の可能性が高かった、危険度の高い場所だったと想像できます。そういう場所は、防御を高めてもリスクをゼロにすることは難しいでしょう。なるべくなら、近づかないことが大事です。一方で、危険度が低めであれば、マスクを装着し、前後の消毒など対策をしっかりすることで、リスクを大きく下げることが可能となります。