グリーン電力でなければ「環境にやさしくない」

さらに、EVは走行時にも大量の電力を消費するので、それもグリーン電力でなければCO2削減の意味は薄れる。つまり、EV化を進めるべきか否かということは、発電がどれほどグリーンになっているかということと極めてリンクしているのである。

テスラはモデルによってはMX-30の3倍近い100kWhのバッテリーを搭載しているので、現在の作り方では、廃車まで使い切ったとしても内燃機関車よりも多くのCO2を排出することとなると考えざるを得ない。火力発電比率の高い日本やアメリカ、中国でテスラに乗ることは、かえって地球温暖化を促進してしまうのである。

欧州メーカーのEVは、発電のグリーン化が進んでいるEU内でバッテリーが作られているならCO2削減効果は日米中のメーカーより高いと考えられる。

しかし現在のドイツのEVは妙に高性能指向のモデルが多く、80kWh~100kWhという大容量バッテリーを搭載している上にパワフルなモーターを使っているため走行時の電力消費も大きい。仮にバッテリーがすべてEU製だとしてもCO2削減効果は極めて限定的だろう。欧州製EVも、日本で乗るのは環境に優しくないと考えるべきだ。

風力発電所に近いビーチを走る母と息子
写真=iStock.com/kohei_hara
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「グリーン化を進めつつ発電量も増やす」という難題

現在、欧州を先頭に発電のグリーン化が進んでいるが、同時に火力発電の廃止も進めなくてはならない。グリーン化を進めつつ発電量も増やすのは容易なことではないだろう。

EVの急速な普及は、生産でも使用でも電力需要の急速な拡大も意味するので、火力発電を増やす必要が生じて発電のグリーン化の足を引っ張ることにもなりかねない。それでなくても電力需要は逼迫ひっぱくしているのである。俯瞰ふかん的に考えた場合、既存の電力需要のグリーン化がまず優先されるべきなのではないか。

現状の発電状況は、先行しているヨーロッパにおいてでさえグリーン化プロセスの途上であり、EVを普及させるよりハイブリッドをより効率化させて普及させるほうが社会全体のCO2削減に効果的なのではないだろうか。

しかも、そのほうがユーザーの経済的負担も軽く、利便性も今と変わらずに車に乗ることができるのだ。ディーゼルとハイブリッドを組み合わせれば、さらにCO2を削減することができるかもしれない。