火力発電比率の高いエリアではハイブリッドがベター?

MX-30のEVは欧州市場をメインに企画された商品のため、日本で作って欧州で使われるということを念頭に置き、生産から使用におけるCO2排出量のシミュレーションを行うと、ディーゼルエンジン搭載車と比較してCO2排出量が走行距離8.6万kmの時点でイーブンになるのが35.5kWhという容量とのことだ。

航続距離を伸ばそうとして大容量バッテリーを積んでしまうと生産時のCO2排出量が大きく増えてしまい、イーブンになる走行距離はその分増えることになる。

マツダはバッテリーの寿命は16万kmと想定しているということで、このバッテリー容量であれば生産から廃車にいたるプロセスで十分なCO2削減効果が得られると判断、この容量に決めたということである。

日本で使用する場合は、火力発電比率が高いため使用におけるCO2排出量が欧州よりも多くなってしまうので、より多く走行しないとCO2削減効果が得られない。日本では10万~15万km程度で廃車になるケースが多いと考えると、MX-30のバッテリー容量でもCO2削減効果はあまり得られないということになる。

これはCO2排出量の少ないディーゼル車との比較なので、ガソリン車との比較では多少の削減効果はあるかもしれない。しかし最新のハイブリッド車であればディーゼルよりさらにCO2排出量は少なく、火力発電比率の高いエリアではEVよりハイブリッドのほうが環境に優しいと考えるべきだろう。

「どこでバッテリーを作るか」という大問題

このことは重大な問題を示唆している。EVのCO2削減効果というものは、どこでバッテリーを作るかによって大きく変わってしまうということだ。

現在、EV用バッテリーシェアでトップは韓国のLG化学、2位は中国のCATL、3位が日本のパナソニック、4位が韓国のサムスンSDI、5位が中国のBYD、6位が韓国のSKイノベーション、7位が日本のエンビジョンAESC、8位は日本のPEVEである(2020年)。なんとこの8社で9割以上のシェアである。残りの1割も中国メーカーが多い。

つまりEV用バッテリーの生産は日中韓3カ国のメーカーに占められているのだ。もちろん生産は日中韓だけで行っているわけではないが、本国での生産が多いと考えられる。韓国も中国も火力発電比率は約70%、しかも両国ともCO2排出の多い石炭火力が主力だ。

テスラはアメリカと中国で生産しているが、使用しているバッテリーはパナソニック製で、日本のほかアメリカでも生産している。アメリカでも火力発電が6割以上(うち石炭は3割以上)を占めている。

アメリカで建設が進んでいるテスラとパナソニックの合弁によるギガファクトリーは、完成のあかつきには生産に必要な電力はすべてグリーン電力とするとしているが、EVの生産だけをグリーンにすればよいという話ではないだろう。ちなみにテスラの中国工場では、CATL製のバッテリーも使いはじめるようだ。