「エンジン」のままカーボンフリーが実現する可能性

電気から作るカーボンフリー燃料の可能性はほかにもある。

アンモニアもその1つだ。水素からアンモニアが合成できる。アンモニアは水素よりも液化しやすいので輸送や貯蔵にも適している。アンモニアには炭素が含まれないため、燃やしてもCO2は一切排出されない。ガスタービンや、ディーゼルエンジンでの利用などに可能性がある(過去にジェット戦闘機やディーゼルエンジン搭載のバスに使われた実例もある)。

このように、電力で合成燃料を作ることができれば、エネルギーの貯蔵ができるので電力の需給ギャップ問題も解決できる。電力不足時にはその燃料でカーボンフリー火力発電を行えばいいのだ。

エコフレンドリーな車の概念
写真=iStock.com/Petmal
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さらには、CO2をもとに燃料を作るという研究も行われており、実験室レベルではすでに成功している。つまり人工的に光合成を行うということだ。

グリーン電力を使えるのであればCO2を回収して燃料に戻すことが可能なのだ。日本でも東芝などが開発を進めており、2025年にANAのジェット機を飛ばすことを目指しているという。

このように合成燃料の生産ができると、内燃機関のままでカーボンフリーが達成できてしまうのである。

EVを生かしつつ、さらなる未来を見据える重要性

カーボンフリー社会を実現するためにはEVしかないという極端な論調が目につくが、決してEVだけが解決策ではないということがわかっていただけただろうか。

山崎明『マツダがBMWを超える日』(講談社+α新書)
山崎明『マツダがBMWを超える日』(講談社+α新書)

冒頭に書いたように、EVは使い道によっては利点も多いのである程度は普及するだろう。しかし現時点でのあまりに急速なEV化はCO2削減という本来の目的に対してデメリットが多く、一方で将来グリーン発電が進めば全く異なるシナリオも現実味を帯びてくる。

すべての自動車がEVになるというのはおそらく間違いだと私は考えるが、どうだろうか。水素や合成燃料で走る車が究極で、EVはそのつなぎでしかないかもしれない。

10年後にはすべてをEVにすると発表している自動車メーカーもあるが、果たしてその判断が正しかったのかどうか、10年後が楽しみである。

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