株価上昇は長くは続かない

金融緩和策による“カネ余り”と、ワクチン接種によって経済の正常化への期待に支えられて、日経平均株価は約30年ぶりの3万円台まで上昇した。2月に入り、世界の主要株式市場を見回しても日経平均株価の上昇率は高い。ワクチン接種で世界経済の正常化が進むとの期待が盛り上がって、海外投資家も世界の景気敏感株である日本株の購入に動いている。

その一方、米国では景気回復への期待などから長期(10年)と超長期(30年)の金利(国債の流通利回り)が上昇している。日本の金融市場でも金利が少しずつ上昇しているものの、今のところわが国をはじめ主要国の株価は総じて堅調さを維持している。おそらく、主要国の株価にはもう少し上昇余地があるだろう。

米ウォール街のニューヨーク証券取引所
写真=AFP/時事通信フォト
米ウォール街のニューヨーク証券取引所=2021年1月12日、アメリカ・ニューヨーク市

ただ、株価上昇が長く続くことは考えづらい。米国で想定以上のペースで物価が上昇すれば、短期から超長期までの金利には強い上昇圧力がかかり、世界的に株価は調整する可能性がある。今すぐそうした展開が鮮明になるとは考えづらいが、米金利の動向がわが国の株価に与える不透明な要素は軽視できない。

30年ぶりの高値をつけた背景

2月15日、日経平均株価は1990年8月以来の30,000円台を回復し、その後も上昇した。世界の投資家は、米国を中心に世界的な低金利環境が続くとの見方に加えて、ワクチン接種によって世界経済が正常化する展開を期待し、自動車、機械など在来産業が多い日本株を買い始めた。

海外の投資家にとって日本株は、世界経済が上向くと業績が回復する景気敏感株の代表格だ。日経平均株価が上昇する状況下、米国の株式市場でもIT先端分野から景気敏感株に投資資金がシフトした。その一方で、半導体などIT関連銘柄の多い韓国株の上値は重い。

2月初めから24日までの主要株式インデックスの変化率を見ると、在来産業の株を中心に構成されたニューヨーク・ダウ工業株30種平均株価が6.6%、GAFAMなどIT先端銘柄が多いナスダック総合指数は4.0%だった。同じ期間、日経平均株価の上昇率は7.3%と高かった。足許、わが国の株価は3~4割程度の増益を織り込んでいると考えられる。

つまり、年後半にかけての企業業績の拡大を見込む海外投資家は増えている。それ以上の増益達成を期待する海外のファンド・マネージャーもいる。