日経平均株価「1000円超下落」はその予兆である
徐々にではあるが、米国債市場ではインフレ率が2%近辺まで上昇する展開を念頭に置く投資家が増えている。現在のFRBの金融政策では2%程度の物価上昇率は許容される。その点に関して、2月24日の議会証言にてパウエルFRB議長が長期にわたって金利が低位に推移するとの見方を示したことは、投資家が当面は低金利環境が続くことを再認識する重要な機会だった。
短期的に、米長期国債の流通利回りが上昇したとしても日米を中心に株価は上昇基調を維持する可能性がある。言い換えれば、今後数カ月の間に米国のインフレ率が2.5%程度に達し、FRBの金融政策が変更される展開は多くの投資家にとって想定外といえる。翌25日の日経平均株価の上昇を見る限り、世界の株式投資家の多くが、パウエル議長の発言に安心感を覚えた。
ただし、長い間、わが国などの株価が上昇トレンドを維持する展開は考えづらい。どこかのタイミングで株価は下落に転じるだろう。2月最終営業日となる26日、日経平均株価は一時1000円超下落した。これはその予兆といえる。今後の展開を考える上で、年後半の物価動向と米2年金利の推移が重要だ。
短期債の2年国債をどう読むべきか
現在、米国の国債市場は、長期、超長期に比べて短期債の利回りはほとんど上昇していない。それは、短期債の指標ともいえる2年国債を見ると分かりやすい。
高値警戒感や長期金利上昇への懸念からIT先端銘柄を売った投資家は、資金の一部を日本株などの敏感株に再配分する。彼らは、残りの資金を価格の変動リスクが相対的に小さい米2年国債をはじめ短期の債券などに回しているようだ。それは、米2年金利の低位安定を支える一因だ。なお、2020年末以降、米国の2年よりも短い金利に顕著な上昇圧力はかかっていない。
今後、世界が集団免疫を獲得し、米国のインフレ率が2.5%程度に上昇すれば、金融政策の正常化観測が台頭する。その場合、金融政策の動向を反映しやすい米2年国債の流通利回りには上昇圧力がかかる。その展開が鮮明となれば、投資家は価格変動のリスクを回避して株式などを売却し、価格変動リスクのない現金を保有しようとするだろう。