「対話と協力」を求めた裏には、習近平氏の魂胆がある

習氏がバイデン氏に対話や協力を求めた裏には、魂胆がある。米中の冷戦解消に積極的に進んで取り組む姿勢を国際社会にアピールすることで、中国のイメージアップを図ったのだ。言葉では何とでも言える。中国らしいやり方である。

2019年6月4日、香港のビクトリアパークで行われた天安門事件30周年の集会
写真=iStock.com/Derek Yung
2019年6月4日、香港のビクトリアパークで行われた天安門事件30周年の集会

バイデン氏がそんな習氏に応じなかったのは評価できる。

これまで中国は「自由で開かれたインド太平洋」を「対中包囲網」として強く警戒し、香港や台湾の問題には譲歩できない「核心的利益」「内政問題」と主張している。

ただバイデン氏の対応がすべて褒められるわけではない。沙鴎一歩には今回の米中会談で心配なところがある。

習近平政権にはわずかな隙も見せてはならない

トランプ前政権では、中国に対しかなりの圧力で臨んだ。それに比べてバイデン新政権は圧力を弱めようと模索している。

中国はしたたかな国家だ。腹中は理解しがたく難く、念頭にあるのは自国の繁栄=中国共産党の栄華だ。国際秩序を守るつもりはない。最近の台湾の防空識別圏への侵入や香港の民主化デモに対する制圧を見ればよく分かるだろう。

会談終了後、バイデン氏はツイッターに「気候変動という地球規模の課題などでアメリカ国民の利益になるなら協力する」と書き込んだ。甘すぎる。中国や習近平国家主席を甘く見ると、ひどい目に遭う。習近平政権にはわずかな隙も見せてはならない。