このことはまた、日本がヨーロッパ連合(EU)やアフリカ連合(AU)などの連合機構とASEANとの間を結ぶ接着剤的な役割を果たすことにもなり得るということだ。当然のことながら、台湾もこれに入ってもらうことでリムランド的役割を担うことが期待できるだろう。

当面の最重要課題……対中国政策の国際的協力

このように、FOIPをプラットホームとして価値観を同じくする諸国が様々な協力関係を作っていくことになる。

まず、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国の首脳が、いつでも協議可能なサミットプロセスを構築し、将来的にはイギリス、フランスも加盟国に加えて、「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」との協力関係の具体策や、他の関係国(EU、カナダ、ニュージーランド)との連携の枠組みなどを具体化する作業に入ることになる。

自由の女神やエッフェル塔など世界各国のランドマークのイラスト
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例えば、コロナ禍の拡大・継続により、経済や金融の危機に直面している一部途上国に対して、財政危機や経済格差拡大などに対処する資金援助や経済改革支援の枠組みを構築することなども視野に入れた活動も必要となろう。

そして、当面の最重要課題である対中国政策の国際的協力の枠組み作りを急がねばならない。中国が急速な軍拡を進め、膨張政策をとっていることに対して、日本は自らの防衛力を高め、日米同盟関係の強化に努めることは当然として、クアッド(米国、日本、オーストラリア、インドによる「4カ国安全保障対話」)の広範囲な連携を利用した軍縮を目途としたインド太平洋地域の軍備管理の枠組みを作り出すことも重要である。

特に中国が中距離弾道ミサイルや巡航ミサイルなどの戦域打撃能力を増強させている現状を考慮すれば、中国、アメリカ、ロシアなどが加わるインド太平洋地域の軍縮・軍備管理枠組みを構築する考え方も現実味を帯びてきている。

米ソ冷戦時代には先制攻撃を受けたらそれに反撃し、互いに破壊に至るという「相互確証破壊」をコンセプトにした米ソの軍縮と軍備管理の枠組みが出来上がっていた。このことで冷戦時代は際どい所で安全保障環境の安定が図られていた。

だが、これはあくまでも米ソ間の安定化であって、中国のことは想定されていなかったと言える。中国が軍拡を続け装備の近代化を急速に進める中、アジアを中心とした安全保障環境の安定化を図ることは必要である。

中国の優位性は退化の一途を辿ることになる

これまで中国は各国と個別に安全保障問題を扱ってきていた。例えば尖閣諸島での中国船衝突事件に絡む一連の事件の中で、日本向けのレアアース輸出禁止措置や、中国政府の依頼により中国国内で地盤の調査などをしていた日本の建設会社の技術者をスパイ容疑で逮捕して人質にするなど、近代国家としては信じられないような見境のない手段で恐喝し、さまざまなレベルで圧力をかける強硬策をとることができた。

それに対抗して、日本は新たなイノベーションでレアメタルを必要としない製品や、レアメタルに代替できる素材の開発、更にはインドから、いかなる政治的状況の変化があったとしてもレアメタルを日本に供給するという約束を取りつけた。