中国では未承認だが、UAEで先行して承認
新型コロナのワクチンをめぐっては、英国で2日、米ファイザーと独ビオンテックが共同で開発したワクチンが世界で初承認され、すでに10万人を超える市民が1度目の接種を済ませた。次いで、米モデルナ製ワクチンに対し、米食料品医薬局(FDA)が緊急使用を許可した。
一方、中国でもワクチン開発が進められている。現在までに、中国国外で5種類のワクチンの臨床試験が行われている。そのうちシノファーム製ワクチンは、12月9日にアラブ首長国連邦(UAE)で世界で初めて正式承認された。
「世界で初めて」とは、中国でも承認されていないということだ。シノファーム社はUAEでの臨床試験を7月に実施。9月にはすでに緊急使用の認可をUAE政府から取り付けていた。UAEでの臨床試験では「86%の有効性が確認された」とされている。
インドネシアは120万回分を輸入したが…
中国はこのような「ワクチン外交」に積極的だ。例えば死者数、感染者数が東南アジア最多となるインドネシアは、12月中に中国・シノバック製のワクチン120万回分を輸入。さらに1月以降に180万回分が到着する運びだという。
中国製ワクチンの安全性を危惧する声も広がっているが、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は「自らがワクチン接種の第1号となる」と国民向けに動画で呼びかけ、不安の払拭に努めている。
東南アジア各国にとって、中国の存在は外交的に非常にセンシティブな存在だ。中国は南シナ海の領有を主張する「九段線」を設け、さらに人工島に「空港」を設置するなど、存在感を高めている。
インドネシアも例外ではない。最近も中国漁船がインドネシアの排他的経済水域(EEZ)へ侵入するトラブルがあった。しかしルトノ・マルスディ外相は「中国とのワクチンでの協働は、政府の南シナ海政策に影響を与えるものではない。それとこれとは別の話」と明言。ワクチンの導入を積極的に行うという立場を明確にした。