「一帯一路」関係国に売る中国の狙い
中国は「一帯一路」のスローガンを掲げ、国際的なインフラ投資計画を複数国との間で繰り広げている。中国は資金力の弱い国に融資を進め、港湾や鉄道、道路などの建設を持ちかけ、社会インフラの強化を進めている。しかし、建設費の返済ができなくなると、建設したインフラそのものを中国が債権として押さえるという事例もあり、各国で問題視されている。
同じように中国は、「資金力の弱い国」にワクチンの提供を提案している。これについてAFP(12月17日)は「気前の良さは100%利他的なものとはいえない。中国政府が求めているのは外交上の長期的な見返りだ」と指摘。つまり、一帯一路で中国が行った「多額の融資と債権の取り立て」と同じようなことがやがて「ワクチンの見返り要求」という形で起きる懸念があるというわけだ。
AFPは記事で「この戦略には、新型コロナ流行初期の中国政府の対応への怒りや批判をかわし、中国のバイオテクノロジー企業の知名度を上げ、アジア内外での中国の影響力を強化・拡大するなど、複数のメリットがある」と述べ、中国がワクチン外交を今後強力に進めていくのではないか、という見方を示している。
王毅外相が提唱した「健康のシルクロード」
中国の「ワクチン外交」には「健康のシルクロード」という呼び名もある。
中国の王毅外相は12月11日、「2020年の国際情勢と中国外交」と称する演説を実施。「世界経済の回復加速に助力する」をテーマに今後の方針を示す中、「一帯一路の質の高い共同建設の推進に力を入れ、健康シルクロードなどの建設を加速する」と指摘した。
コロナ禍は欧州で、まず最初にイタリアで感染が広がった。そもそもイタリアは中国人の出入りが多いため、欧州のどこよりも早く中国からウイルスがもたらされても不思議はない。中国はコロナ対策に喘ぐイタリアの保健当局を支援する目的で、人や物資を送った。中国政府はこうした「国際協力・衛生支援の施策」について、「健康のシルクロード」と呼んでいるのだ。
その後中国は6月に入り、「一帯一路国際協力ハイレベル会議」なるオンラインイベントを実施。その際には、24カ国の外相をはじめ、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長も出席している。