私くらいの知識と経験で飼えるのはせいぜい20匹

そもそも「ネコ屋敷」は猫同士のケンカなどで長続きしない<br><strong>作家 畑 正憲</strong>●1935年、福岡県生まれ。愛称「ムツゴロウさん」。東京大学理学部卒業。同大学院で運動生理学を専攻。学研映画を経て、作家として独立。
そもそも「ネコ屋敷」は猫同士のケンカなどで長続きしない
作家 畑 正憲●1935年、福岡県生まれ。愛称「ムツゴロウさん」。東京大学理学部卒業。同大学院で運動生理学を専攻。学研映画を経て、作家として独立。

「その質問はたいへん興味深い。マンションの一室がネコ屋敷になることは、ちょっと考えられないからです。飼い主が平穏に暮らせるとすれば、せいぜい5匹がいいところでしょう。

猫は自由に出歩く動物なので、都会の場合は外へ出て事故などのトラブルに遭う可能性が高い。屋敷を成立させるためには柵などを作って閉じ込めて飼わなきゃいけない。しかしそうすると内部的な問題が出てくる。猫同士のケンカ、いじめ、病気もします。しかも繁殖しますから雄同士の激しい闘争が起こる。じゃあ去勢しようということになれば、相当に費用が嵩む。複数の猫を飼うことはたいへんに難しいことで、長続きしないんですね。とてもマンションの一室では無理です。私くらいの知識と経験があって、せいぜい20匹でしょう。

おそらく、『ゴミ屋敷』と混同しているのではないでしょうか。ゴミはいくらでも集められる。ゴミとゴミは戦いませんから。しかし猫同士は違います。繁殖ということで増えていきそうなイメージがありますが、同じ部屋に複数の猫が居つくことは難しいのです」

多くの人は畑さんのような知識がないから、マンションの隣りに出入りする猫を数匹見かけたら、何十匹もいるのではないか、と疑心暗鬼になるのかもしれない。常軌を逸した不潔な部屋=「ゴミ屋敷」に飼い猫が数匹いれば、隣人としては「猫屋敷」のイメージとなる。